2. ビットコインの特徴とは
現在では、ビットコインを筆頭に、星の数ほどの仮想通貨が「生まれては消える」といったことを繰り返しています。それはまさに創世記といっていい状態です。
今、「世界の3大仮想通貨」と呼ばれているのは「ビットコイン」「イーサリアム」「リップル」ですが、その仕組みを理解するには、やはりビットコインを例にするのがもっとも望ましいでしょう。本特集もビットコインを中心に話を進めていきたいと思います。
【ビットコインが普及すれば、銀行はいらなくなる】
ビットコイン誕生のもととなったナカモト論文には、このように書かれています。
「必要なのは、取引相手が信用できるかどうかではない。必要とされているのは、暗号技術に基づいた電子取引システムである。これによって、取引を希望する2者が、第3者機関を介すことなく直接取引をすることができるようになる」
これが実現できれば、第3者機関に支払うコストが不要となって少額決済が可能となり、それが経済の発展に寄与するというのがナカモト氏の主張です。しかしこの一文は、実際はそれ以上に大きな意味を持っています。
そもそも商売をする際に、必ずしも顔見知りだけと取引をするわけではありません。特にネットを介した取引となると、ほとんど知らない者同士で行われることになります。
そうなった際に安心して決済を行うためには、これまでは主に金融機関(第3者機関)を通す必要がありました。たとえば銀行やクレジット会社などが本人に代わってお金を徴収したり、送金したりすることによって、取引が間違いないかどうかを保証してきたわけです。
ところがビットコインのシステムではそれがいらないとなったため、これが普及することになったりすれば、銀行やクレジットカード会社などのビジネスモデルが成り立たなくなります。
【ビットコインは、国家の利権をも侵す】
さらに、絶対に通貨を偽造できない仕組みをつくれば、国家による通貨の裏付けそのものが不要となります(ビットコインの仕組みについては後述)。
もともと、現在の1万円札の製造コストは1枚20円ほどだといわれていますから、お金自体には価値はありません。ほとんどの通貨が、「国家への信頼によって価値を担保されているに過ぎない」という現代社会においては、国の動静が金融危機を誘発しやすい状態にあります。最近でいうなら2016年11月、インドのモディ首相が突如高額紙幣の廃止を発表したために、インド国内は大混乱に陥りました。
この一件が引き金となって、現在、ビットコインは1BTC(ビットコインの単位)あたり15万円を超える高値が付いています(2017年1月5日現在)。資金の逃避先としてビットコインが選ばれているということは、人々が仮想通貨を「金融危機が及ばない通貨」として認識し始めているということの表れではないでしょうか。
ナカモト氏の「第3者機関を不要にする」という思想は、国家の既得権益を犯しかねない思想をはらんでいます。国にとって、通貨発行権こそが最大の利権だからです。このように、ビットコインは「第3者機関の仲介」と「国家による保証」の両方を、暗号システムによって一挙に不要にできる可能性があることを示唆したのです。