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金融メディアの「勘違い」と、ソロスが嵌った「落し穴」の共通点=近藤駿介

「トランプ政策による米景気が世界経済をけん引する(13日付日経新聞)」と報じられているが、どんなロジックなのか。保護主義的な政策は世界から成長を奪うものである。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

投資行動は「感情」ではなく「勘定」、冷静にロジカルに判断せよ

「米景気が世界経済をけん引する」という報道の矛盾

「トランプ次期米大統領の政策によって米景気が世界経済をけん引し、短期的に上振れする」(13日付日経電子版「米成長上振れ、世界経済けん引 本社景気討論会」)

どのようにしたら、保護主義的な政策をとるトランプの米国が、世界経済をけん引するというロジックが組み立てられるのだろうか。

「アメリカのトランプ次期大統領から批判を受けた企業の間でメキシコの工場の建設計画を撤回する動きが相次ぎ、先行きが不透明になっていることから、IMF=国際通貨基金は、ことしのメキシコ経済の成長率の見通しを大幅に下方修正し、1%台後半とする方向で調整を進めています」(13日付NHK NEWS WEB「IMF メキシコの成長率下方修正へ トランプ氏の影響考慮」)

IMFはトランプ氏の登場によってメキシコへの工場建設計画が相次いで撤回されていることから、メキシコの成長率見通しを大幅に引き下げる検討に入ったと報じられている。保護主義的政策は他国から成長を奪うもの。成長もゼロサムゲームだから。

トランプ次期大統領の政策が本当に保護主義的なものであるなら、米国が世界経済のけん引役になるというのはおかしな話だし、本当に世界経済のけん引役になるのであれば、保護主義的な政策だという批判が間違い・お門違いということになる。

見通しの間違いは恥ずかしいことではないが、見通しのロジックに矛盾があるのは専門家として恥ずかしいことだ。

ソロスも嵌った、投資における「好き・嫌い」の罠

「著名投資家ジョージ・ソロス氏(86)が昨年11月の米大統領選後の株高で巨額の損失を出したことが明らかになった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が12日報じた。トランプ氏の勝利によって株安になるとみて投資戦略を立てたが、予想に反して急伸損失額は10億ドル(約1150億円)近くに及んだという」(13日付日経電子版『ソロス氏「トランプ相場」で誤算 損失10億ドル近く』)

イングランド銀行相手には客観的判断力を存分に発揮できたソロスも、今回の大統領選挙では、クリントン氏を支持したという感情論が足枷となり、客観的判断力を発揮できなかったようだ。

自分が支持した候補の敗北を受けて株価上昇に賭けるのは感情的に難しいこと。投資で失敗しないためには、感情的に「無」の状態を保ち、客観性を保つようにしなければならない。

トランプ次期大統領の発言に市場が振り回されているのも、多くの人たちがトランプ候補を好き、嫌いで判断しているからだ。

投資において最も邪魔になるのは、こうした個人的好き嫌いという感情だ。ソロスですらこうした罠にはまったということは投資家にとっての大きな教訓となる。

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近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2017年1月13日・14日号)より
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