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ソロス氏も大損失!「トランプ相場の荒波」を個人投資家が乗り切る方法=江守哲

20日の米大統領就任式後、トランプ氏のドルに関する発言が聞かれるのかが注目されていますが、手元にあるデータを利用して理論的に考えれば、現在のドル円が118円を大きく超えて円安になることはないとの結論になります。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2017年1月16日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守 哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

今年最初のチャンスは近い。常にキャッシュを用意し買い場を探せ

ヘッジファンドの運用成績「二極化」の背景

2016年はヘッジファンドにとって、まさに悲喜こもごもだったようです。トランプ氏が大統領選に勝利し、これに乗ることで、年間ベースでの収益を確保したところも少ないくないようです。

しかし、これらのファンドの多くはそれまでの運用成績が芳しくなかったといえます。つまり、トランプ氏の勝利後の市場動向にまさに「賭けた」わけです。

結果的に、これが上手くいったため、いかにも素晴らしい戦略のように見えますが、あまり論理的に練られた戦略とはいえないでしょう。つまり、流れに乗ったということです。

結果としてトランプ氏の勝利後に株価とドルが上昇したため、それに乗れれば収益が出ただけの話です。

つまり、多くのファンドは、トランプ氏の勝利後にそのような市場動向になると読んでいた向きはほとんどいなかったわけです。

これは再現性のないトレード結果といえます。つまり、ノウハウとして蓄積しづらい戦略であり、結果だったといえるでしょう

その時々の市場動向に合わせてトレードすることは決して悪いわけではありませんし、収益が出ればそれでよいという考え方もあります。しかし、長期的に運用しようとすれば、やはりそこには再現性が必要ではないかと考えます。

トランプ相場で大損失を出したジョージ・ソロス氏

その点では、ジョージ・ソロス氏の運用の考え方や結果は、ある程度納得がいくところがあります。

ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたところでは、米著名投資家ジョージ・ソロス氏は昨年11月の米大統領選でトランプ氏が勝利し、大方の予想に反して株価が上昇した結果、10億ドル近い損失を出したようです。

ソロス氏は大統領選後に株価が下落するとみてショートポジションを増やしました。しかし、トランプ氏が掲げる経済政策に期待した「トランプラリー」が進行したため、株価が急伸しました。

この結果、ソロス氏は損失拡大を避けるため、昨年末までにショートポジションの多くを解消したようです

ソロス氏といえば、私がもっとも尊敬するヘッジファンドマネージャーです。ソロス氏が行っている戦略は、私がこのメルマガでご紹介している「グローバルマクロ戦略」を得意としており、それを実行しています。

ソロス氏が著名になったのは、1992年のポンド危機の際、イングランド銀行(英中央銀行)に対抗してポンドを売り浴びせ、巨額の利益を上げたことです。

ただし、実際には売り浴びせたことでポンドが下げたわけではなく、下げるべくして下げたというのがソロス氏の考えです。つまり、理論的に下げざるを得ないと彼は考え、それに忠実に実行しただけです。

ソロス氏は、自身のポンドの価値に関する理論値の計算に基づき、ポンドを割高と判断し、それを忠実に実行しただけだったわけです。

ソロス氏の失敗に見る教訓

さて、今回のトランプ氏の勝利後の市場動向については、百戦錬磨のソロス氏ですら損失を出しています。それだけ読みづらかったといえるでしょう。

ソロス氏も、今回の市場の動きにはかなり苦労したということになります。さすがのソロス氏でも読めなかったわけです。

グローバルマクロ戦略の醍醐味は、このように世界情勢を読みながらポジションを大胆にとって、大きく収益を上げることを目指すところにあります。しかし、個人投資家はこのように1つの戦略に大胆に賭けるのは難しいと思います。

ですので、基本的な考え方は同じですが、ポジション量を落として分散もしながら、収益を獲得することを狙うのがよいと考えています。

人間はAI(人工知能)に勝てるのか?

そういえば、メルマガでも取り上げたことがある、ブリッジ・ウォーターのレイ・ダリオ氏ですが、彼は16年に大きなクラッシュが起きると言い続けていました。

その根拠は、世界恐慌後の金融政策の方向性や株価動向に似ているというものでした。しかし、彼の言った通りにはなりませんでした。ならなかったどころか、米国株は過去最高値を更新し続けるほどの好調さでした。

彼のファンドはいまはシステムトレード中心ですので、このような読みで運用することはあまりないようです。しかし、そのシステムに組み込まれているのは、ダリオ氏や社員の知能と言われています。いわゆるAI(人工知能)を駆使したシステム運用ですね。

AIは日々進歩しますので、どんどん良くなっていくと思います。市場環境をAIに組み込んで運用を行う動きは今後どんどん進んでいくでしょう。

そうなった場合、前述のソロス氏のような、頭で考えて投資判断をするのがよいのか、それとも機械に判断させるのがよいのか、今後はこの手の議論が頻繁に持ち上がりそうです。

AIにしても、結局は人間の考えを機械に覚えさせて判断させるわけですから、やはり人間の考えが大きく作用することになります。過去の突発的な価格変動や、知らずに忍び寄る危機などに機械が対応できるのか、このあたりがポイントになるのかもしれません。

市場では、今年も数多くのリスク要因が指摘されています。しかし、それらのリスクをいちいち気にしていては、運用などできません。

このあたりの判断は人間が行った方がよさそうですが、いずれにしても、今年はリスク量を抑えながら、こまめに利益を確保しながら収益を積み上げることを考えた方がよさそうです。

そして、大きく下げたときに買いには入れるよう、常にキャッシュを用意しながら対応するのがよいと思います。今年最初のそのタイミングは結構近いように感じています。

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