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今のビットコインバブルが、80年代不動産バブルよりも危ない理由=中島聡

「パチンコで食べている」と豪語する人の方便

たまに「パチンコで食べている」と豪語する人がいますが、これもほとんどの場合は方便です。パチンコは、全体で見れば(店の利益の分だけ)負のリターンがあるので、ゼロサムゲームどころか、必ず損をするように出来ているのです。パチンコは、その射幸性により「儲けることが出来るかも知れない」という幻想を作り出し、依存症になった弱者からお金を搾取する悪質な商売以外の何者でもないのです(韓国がパチンコを法律で禁止したのは、それが理由です)。

では一般の通貨はどうでしょうか?お金は銀行に預けると、金利というリターンが着くので、表面上はゼロサムゲームではありません。しかし、実際にはインフレ(物価の上昇)によりお金の価値は毎年少しづつ下がるので、金利=インフレであればゼロサムだし、金利<インフレであればマイナスのリターンです。

最悪なのが、現金で持つ「タンス預金」で、銀行預金と違って金利がつかないので、物価の上昇分だけ毎年目減りすることになります。つまり、通貨そのもの(現金投資対象とは言えないのです。

自国の通貨ではなく、他国の通貨(例えば、日本人にとっての米ドル)はもっと複雑です。為替は日々変化する上に、金利も国ごとによって違います。その結果、他国の通貨を使った資産運用は、本質的に相場の変動を利用して利益を得ようとする短期的な取引であり、「投資」ではなく「投機」と呼ばれます。「運」に左右されるため、基本的にはギャンブルと同じです。

ビットコインはその価値全てがバブルだ

ビットコインは、これまでの金融商品とは異なるものなので、とても理解しにくいのですが、ビットコインを持っていても、(所有している)ビットコインそのものの数が増えたりはしないので、株や不動産とは違って、リターンのある投資対象ではありません

その意味では、ビットコインを購入する行動は他国の通貨を購入する行動と似ています。1ビットコインで購入できる日本円の量は、為替相場と同じく、毎日のように変化しています。その意味では、ビットコインの購入は(ビットコインそのものが生み出すリターンを期待する)「投資」ではなく(利ざや狙いの)「投機」です。

通貨と異なるのは、その裏付けになる国が存在しない点です。米ドルは日本では使えませんが、米国に行けば、ものが購入できるし人が雇えます。特に不動産や人件費のような流通の難しいものの価格は、為替相場に関わらず、それぞれの国の事情で決まるため、それが為替相場を安定させる役割を果たします。

例えば日本円に対する米ドルの価値が極端に高くなったとすると(=円安)、相対的に日本の人件費が安くなるため、米国企業による日本へのアウトソーシングが増え、その結果として円が買われてドルが売られ、それが円高圧力となって為替相場を安定させるのです。「通貨バブル」が市場主導で発生しないのは、これが理由です(「通貨バブル」は、政府が特殊な金融政策をとった時に発生しますが、その話は別の機会にしたいと思います)。

ビットコインは裏付けとなる国がないため、為替相場のような「相場を安定させる力が働かず買いたい人が多ければ値段は暴騰するし、売りたい人が多ければ暴落します。

ビットコイン相場は、誕生以来、乱高下を繰り返しながらも全体では順調に上昇していますが、それはビットコインの認知度が上昇するにつれ、ビットコインに新たに参入する人たちが次々に現れているからです。

すでにビットコインを持っている人たちにとっては、相場を上げてくれる新規参入者たちは大歓迎なので、「ビットコインはまだまだ上がる今のうちに買わないと買えなくなるよと煽るし、ビットコインのことを知ったばかりの人たちは、その言葉に踊らされて「今のうちにビットコインを買っておけば一儲けできるかも知れない」と新規参入してくるのです。

株や不動産と違って、配当や家賃収入という形のリターンのないビットコインで儲ける唯一の方法は、買った時の値段よりも高い値段で売る「利ざや稼ぎ」なのです。つまり、(株や不動産への投資家たちと違って)ビットコインを持っている人、買っている人の全てがその「利ざや稼ぎだけを狙っているのです。

このように、配当や家賃収入のようなリターンが全くなく、かつ、参加者全員が「利ざや稼ぎ」を狙っているビットコインは、その価値全てがバブルと言っても過言ではないのです。

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