スタートアップ企業はどこまで赤字を掘っても許されるのか?=シバタナオキ

スタートアップやベンチャー企業など、創業から間もない急成長を目指す会社は、一般的に赤字になりやすい傾向にあります。では、どこまで赤字を掘っても許されるのでしょうか?(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2017年10月6日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

成長スピードが最優先。赤字が許容される「一定のルール」とは?

スタートアップが赤字になりがちな理由

最近、立て続けにマネーフォワードの赤字上場に関して書いたところ、非常に大きな反響を頂きました。ですので、今日はもう少し一般化して、掘り下げてみたいと思います。
※参考:【保存版】マネーフォワードのIPOはSaaSのお手本レベル
※参考:深謀?無謀?赤字上場ベンチャーの見極め方

ズバリ、テーマは「スタートアップがどこまで赤字を掘っても許されるのか」です。

スタートアップやベンチャー企業といった、創業間もない、急成長を目指す会社は、一般的に赤字になりやすい傾向にあります。理由はいくつか考えられます。

1つ目は、ベンチャーキャピタルなどからの資金供給が豊富であるために、短期の売上や利益を追求するプレッシャーがあまり大きくない、という点が挙げられます。この点に関してはもちろん賛否両論あるかと思いますが、スタートアップたるもの、大きな夢や野心を抱いてそれに向けて邁進すべし、という観点では、必ずしも悪いことではないのかもしれません。

2つ目は、スタートアップに要求される成長スピードです。スタートアップはその性質上、非常に速いスピードで急成長を求められるケースが多く、短期的な利益と成長スピードを天秤にかける場合、成長スピードが優先される、というのは極めて合理的な考え方でもあります。

3つ目は、特に立ち上がったばかりの市場の場合、マーケットシェアを取ることが極めて重要だという点につきます。よくファーストムーバーアドバンテージという言葉を使いますが、これまでなかった市場において、競合よりも先にユーザーやお客さんを獲得していく、ということの重要性は、強調しすぎてもしすぎることはありません。

では仮に、ベンチャーキャピタルから潤沢な資金が供給されて、急成長できていて、マーケットシェアも順調に拡大できている、というスタートアップがあったとしましょう。一見するととても順調に聞こえるかもしれませんが、こういったスタートアップであっても、無限に大きな赤字を掘って良いわけではありません。

では一体、どの程度の赤字であれば許容されるのでしょうか

SaaSの「40%ルール」

冒頭で紹介したマネーフォワードの例では、SaaSの「40%ルール」を適用してあります。

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SaaSの「40%ルール」というのは、

Your annual revenue growth rate + your operating margin should equal 40%

とある様に、「売上の前年同期比成長率」と「営業利益率」を合計したものが40%以上であることが望ましい、というルールです。

例えば、YoY+100%で伸びているビジネスの場合、営業利益率がマイナス60%までの赤字であっても許容される、という考え方です。

あるいは売上がYoY+40%の場合、その会社はブレークイーブンであるか黒字である必要があります。

売上がYoY+20%の場合、営業利益率が+20%以上である必要があります。

40%ルールの背景にある考え方は、特にSaaSビジネスの様に、初期に赤字が先行し、長い時間にわたって売上を回収していく様なモデルの場合、

  • トップラインを成長させていくことは非常に重要で
  • トップラインが早いスピードで成長している限りそれに応じて大きな赤字を計上することも許容される

という考え方です。

ただこの40%ルールの考え方は、SaaSの様に、初期の(顧客獲得前の)営業マーケティング費用が大きくかさむビジネスには適用しやすいのですが、それ以外のビジネスには適用するのが難しいという難点があります。

そこで、最近新しく提唱されている「5倍積み上げルール」というものを紹介してみたいと思います。

Next: 40%ルールをより一般化した「5倍積み上げルール」とは?

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