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不正蔓延で株価急落、堕落した神戸製鋼に「明るい未来」はあるのか?=栫井駿介

明るい材料が見当たらない

現時点で、不正による短期的な損失がどこまで膨らむかはまだ見当が付きません。多くの自動車会社に納入しており、大量のリコールが発生するようなら、破たんしたタカタのように兆円単位の損失が発生する可能性も否定できません。とにかく、予断を許さない状況です。

このような状況で投資できないのは当然のことですが、もし大きな損失に至らなかったとしても、その先は決して明るくありません

すでに主力の鉄鋼事業は赤字続きであり、アルミや電力事業で何とか赤字を埋め合わせてきました。それでも過去5期のうち3期は最終赤字を計上しています。アルミ事業の信頼を失ったとなると、もはやこの先どうすることもできなくなる可能性があります。

将来の見通しが全く立たない企業は、割安かどうかという以前に、決して手を出してはいけません。市場は将来を織り込むため、生き残ったとしても株価は限りなくゼロに近づいていくでしょう。

私が考える有力シナリオは、まず電力や機械などの周辺事業の売却によって急場をしのぎ、その後残った鉄鋼事業を親密先である新日鐵住金が買収するというものです。新日鐵にとっては規模拡大による固定費率低下は至上命題ですから、十分有り得ると考えます。

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もっとも、それがすぐに起こるわけでもなく、新日鐵としてはギリギリまで待って安くなったところで買収するのが得策でしょう。

バリュー株投資は、優良企業が大幅に下落した時に買うものですが、ダメな企業には決して手を出してはいけません。バフェットは、ダメな企業の典型例として「コモディティ型企業」を挙げます。コモディティ型企業とは、どの会社も同じような製品を作っていて、差別化が難しい会社のことです。

神戸製鋼のような製鉄会社は、代表的なコモディティ型企業です。そこから脱却しようと多角化を図っていましたが、今回の事件でそれがうまくいっていないことが明らかになりました。いくら株価が下がっても、賢明な投資家は決して手を出さない銘柄でしょう。


つばめ投資顧問は相場変動に左右されない「バリュー株投資」を提唱しています。バリュー株投資についてはこちらのページをご覧ください。記事に関する質問も受け付けています。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年10月15日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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