地方衰退の原因は「クルマに依存しきっている」こと
しかし――今地方が「疲弊」している重大な原因は、地方社会が「クルマに依存しきっている」という点にこそ、あるのです!
実はこの「真実」は、今や、地域や交通に着目している研究者、専門家の間では大変有名な「常識」とすら言いうるものなのですが、一般の方にはほとんど知られていないのが実情です。
しかしクルマは、地方を疲弊させる深刻な影響を、実に様々に及ぼしているのです。
第1に、皆がクルマばかり使っていれば(つまり、モータリゼーションが進展すれば)、鉄道はどんどん寂れ、駅前商店街もダメになっていきます。つまり、クルマ社会化は、地域の地元商業や公共交通産業に大きな打撃を与えます。
第2に、クルマ社会化が進めば、郊外の大型ショッピングセンターは大流行(おおはやり)となっていく一方で、それらはいずれも、グローバルマーケットでも活躍するほどの「地域外の資本」でつくられたお店です。だからその利益の大半は地元に戻ってこないで、東京や大阪などの大都市に吸い上げられるのです。
実際、筆者の研究室の調べでは、例えば京都の「商店街」で1万円使えば、5300円が京都に再び戻ってきますが、京都市内の「大型ショッピングセンター」で1万円を使っても、京都にわずか2000円しか戻ってこないのです。
つまり、大資本の大型ショッピングセンターでオカネを使えば、その8割方が、「地元外」に「流出」してしまうのです! そうなれば、住民が一生懸命働いて稼いだオカネが地域外に流出し、地域経済はますます疲弊していく、というわけです。
第3に、そうやってモータリゼーションが進み、地域産業や経済が衰退すればもちろん、地元の市や県に納められる「税金」も少なくなり、行政サービスも劣化していくことになります。
つまり、クルマが便利であることは間違いないし、地方都市ではクルマがなけりゃやっていけないのは事実、だから地方を蘇らせるのに、クルマを排除するなんてナンセンスだ、と思われがちです。
だけどだからといって、クルマに頼り切った社会をつくってしまえば、地域の商業は衰退し、住民所得は地域外に流出して経済は疲弊し、税収も減って行政サービスは劣化し、実に様々なダメージがもたらされ、地方は「踏んだり蹴ったり」の状態になってしまうわけです。
つまり地方ではクルマが当たり前という「常識」こそが、地方を疲弊させているのです。
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