好景気と不景気は表裏一体
この好景気に死角はないのでしょうか。
懸念されるのは、金融緩和の縮小です。金融緩和が縮小すれば、余ったカネは吸収されます。FRB(米連邦準備理事会)は既に金融緩和の縮小に舵を切っていて、ECB(欧州中央銀行)もそのタイミングを探っていると言われています。唯一の例外が日本で、2%のインフレ目標を達成するまでは金融緩和を続けるとしています。
金融緩和が続けば、やがて経済実体の伴わないバブルが発生します。歴史が示している通り、バブルはいつか必ず弾けます。バブルが大きいほど、弾けたときのダメージは大きくなるため、各国の中央銀行は金融緩和からの出口戦略を練らなければならないのです。
中国の投資もいつまでも続くわけではありません。今の好調な投資は、2015年に経済が落ち込みかけた際に政府が発破をかけたことが大きいと考えています。液晶や半導体に対して強い需要があれば良いのですが、スマートフォンが一通り普及した今、そこまで強い需要があるとは思えません。
実需ではなく見込み生産だとすれば、やがて在庫が積み上がり生産は大幅に減少します。そうなれば世界的な経済の流れが停滞し、景気拡大はストップするでしょう。
経済学者のように詳細な分析は行えませんが、確実に言えることは「景気は循環する」ということです。拡大した景気は、どこかで必ず縮小に転じます。景気が悪化すれば企業業績は低迷し、株価は下落に転じるでしょう。
誰も買わない時に買い、誰もが買う時に売る
足元では、好調な経済環境を背景に株価は上昇しています。
投資家の心理を考えると、株価の上昇メカニズムは単純です。上昇し始めた段階では弱気派もたくさんいますが、そこからさらに上昇すると強気派は自信を強め、弱気派だった人の一部も強気派に転じることで、株価はさらなる上昇に向かいます。要するに、上昇が上昇を生むのです。
しかし、ほとんどの人が強気派になったところで、急に上昇は止まります。なぜなら、もう新たに買う人がいなくなるからです。新たに買う人がいなければ、株価は上昇しません。そうなると下がるしかありませんから、投資家は我先にと売りに転じ、大きな株価下落へとつながるのです。
このメカニズムを分かっていれば、誰も買わない時に買い、誰もが買う時に売るのがより良い戦略であることが分かるはずです。投資では確実なことはほとんどありませんが、唯一正しいのは「安く買って高く売る」ことです。
上昇相場を横目に、投資家として何もしないことは簡単ではありません。しかし、バリュー株投資家としては、ここでじっと我慢できるかどうかが正念場と言えます。一時の利益に心を奪われるのではなく、長い目で資産形成を行いましょう。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年10月26日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。