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高値警戒域に足を踏み入れた日経平均株価の変動上限は2万2,479円(10/31)=日暮昭

当マガジンは日経平均の妥当な水準として統計的処理で求めた理論株価をもとに、足元の相場の位置づけを評価する材料を提供するものです。原則として日経平均と理論株価の位置関係を示すグラフと表に若干のコメントを合せて毎週1回配信いたします。皆様のより良い投資成果のための一助にして頂ければ幸いです。

※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。(『投資の視点』日暮昭)

プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

高値上限接近も、業績・市場リスク好転で通常の警戒域にとどまる

日経平均、2万2000円台を維持

10月に入り上げ足を速めた株式相場は、22日の衆議院選挙を経て上昇力がさらに高まり、日経平均は27日には2万2,000円台に達しました。

この9月末からの1カ月足らずで8%を超える上昇を見せた株式相場は、過熱状態にあるのか、あるいはまだ上昇余地があるのか。理論株価と市場リスクの兼ね合いで評価してみましょう。

下図は2016年初から10月27日までの日経平均と理論株価、および日経平均がファンダメンタルズで説明される範囲であることを示す“通常変動の上側と下側”の動きを月末値ベースで示したグラフです。

紺色の線が日経平均、青色が理論株価。緑線が通常変動の下側、赤線が通常変動の上側を示します。併せて10月27日の値を記しています。

日経平均、理論株価と通常変動の上側と下側(月末終値)
2016.1~2017.10(2017年10月は27日終値)

171031rionkabuka_1

図から、この間の相場を理論株価と通常変動の上側と下側との対比で評価すると以下の3つの局面、そして直近の急上昇場面に分けることができます。

局面1. 2016年1月~2016年10月:日経平均は理論株価を一貫して下回り、2月(新興国の経済減速懸念ショック)と6月(BREXITショック)には通常変動の下側も下回る。6月はこの期間中の 底値を付ける。

局面2. 2016年10月~2017年5月:日経平均は理論株価まで回復した後、そのまま通常変動の上側まで上昇し、以降、通常変動の上側に沿って推移。

局面3. 2017年5月~2017年9月:日経平均は通常変動の上側を離れ理論株価に戻り、以降、理論株価に沿って推移。

直近. 2017年9月~2017年10月:日経平均は理論株価を上離れ通常変動の上側を追い越して上昇。

こうした、日経平均が理論株価(および通常変動の上側と下側)を中心とした変動を説明するのが、市場リスクの動きです。下図は上と同じ期間について市場リスクの月次終値と標準リスク、そして通常範囲の上側と下側を示したグラフです。直近の10月27日の市場リスクは標準リスクを下回る6.54%です。

市場リスクの推移(月末値)
2016.1~2017.10(2017年10月は27日終値)

171031rionkabuka_2

市場リスクは上図と同じく、3つの局面と足元の10月の場面に分けて見ることができます。

局面1. 2016年1月~2016年10月:市場リスクは一貫して標準リスクを上回り2月と6月は特に上昇。6月はこの期間中の最大値を付ける(日経平均は底値)。

局面2. 2016年10月~2017年5月:市場リスクはおおむね標準リスクを下回って推移し、最終期に急上昇、2017年5月に一気に通常範囲の上側に達する。

局面3. 2017年5月~2017年9月:市場リスクはほぼ通常範囲の上側に沿って推移、最終期に下離れる。

直近. 2017年9月~2017年10月:市場リスクは急速に低下して10月27日には標準リスクを下回る。

上記から市場リスクと日経平均の間には以下の関係があると言えます。

  1. 市場リスクが「通常範囲の上側」を上回ると、相場は不安定な状況となり急落のリスクもある
  2. 標準リスクが変動しながらも「標準リスク」の下側であれば、日経平均は「通常変動の上側」近辺で推移
  3. 市場リスクがそれ自体の水準にかかわらず一定のレベルで安定すると、日経平均は理論株価にサヤ寄せされる
  4. 市場リスクが急低下すると、日経平均は上昇する

一方、足元で上期決算の発表に伴って、今季業績はさらに上昇する兆しがうかがえます。

こうした業績と市場リスクの状況から現在の日経平均の水準は過熱状態にまでは至っていないと言えますが、半面で、ここでは述べていませんが。日経平均の「変動の上限」という相場が変転するポイントがあります。現在、この水準は2万2,479円です。

これらの条件を兼ね合わせると、日経平均の現状は高値の警戒域に踏み込んでおり、今後、業績がさらに上昇を続けるという後押しがない場合は、そろそろ慎重な姿勢が必要になると言えそうです。

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投資の視点』(2017年10月29日号)より一部抜粋

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