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「住みたい街」で進むスラム化。武蔵小杉タワーマンションの過酷な日常=廣田信子

かつては工場地帯だった「武蔵小杉」ですが、昨今はタワーマンションが立ち並び、「住みたい街ランキング」でも上位にランクインするなど大きな変貌を遂げました。その人気の理由は都心へのアクセスの良さと、複合商業施設の充実ぶり。しかし今、そんな街の住民から悲鳴があがっているといいます。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の廣田信子さんが、ある子育て世代の一家が直面する問題を取り上げながら「住みたい街は、果たして住みやすい街なのか」について論じています。

プロフィール:廣田信子(ひろたのぶこ)
マンション総合コンサルティング(株)代表取締役、一級建築士、マンション管理士 、元マンション管理センター総合研究所主席研究員。著書『2020年マンション大崩壊から逃れる50の方法!』好評発売中。

保育園不足、改札の行列…人気の街にタワマンを買って失敗した話

「住みたい街ランキング」上位は「住みやすい街」か?

平成29年度の保育園の一次選考の発表時期になりました。喜び、落胆、二時選考への希望…様々なドラマが繰り広げられます。

住みたい街ランキング4位となり、注目の街「武蔵小杉保育園不足が深刻です。周辺の駅まで行っても保育園に入れないのです。

武蔵小杉駅には、JRの南武線、横須賀線、湘南新宿ライン、東急の東横線、目黒線の5路線が乗り入れていて、直通で品川や横浜、東京、新宿、池袋に約10~30分で行けるということで、子育て世代に人気でタワーマンションが林立しています。そして、まだまだ、今後も増える予定です。

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大型商業施設があり、買い物も便利で子育てやレジャーの環境も整っている…と様々な媒体で宣伝され、子育て中、今後子供を持つ予定の共働き世帯に人気で、マンションの価格もうなぎ上り…ですが、急速な人口の流入は様々な問題を引き起こすことは過去の事例でも明らかです。

昨年、川崎市中原区の人口が同市の行政区で初めて25万人を突破したとニュースになりました。2015の国勢調査では中原区の10年間の人口増加率が5.8%と県内市区別で1位でした。この人口増加を引っ張っているのが武蔵小杉地区です。転入して出産する例が多いため、待機児童問題が深刻なのです。

本音の声が届きました。金融系の会社に勤めるAさん(40歳)は共働きの奥さん(妊娠中)と子供2人で、武蔵小杉のタワーマンションを購入しました。

購入時には周りからうらやましがられ、最近のメディアの扱いから、すごいね、そんなところに住めるってお金持ちね~などと今でも言われていますが、実情は、自分も含め、お金持ちというより、「夫婦で頑張っている人たち」が多い印象です。二人で子育てしながら頑張って豊かな暮らしを維持している…というイメージでしょうか。したがって共働きの維持は不可欠なのです。

3人目の子供の出産を控え、急速な人口増加によるひずみの深刻さに改めて気付き、茫然としています。ここ数年、駅前のタワーマンションがどんどん増え続けています。想像してみてください。1棟建つごとに数千人の人口が増えるわけですよ。その多くは子育て世代です。今ではものすごい人口過密エリアになってしまいました。

保育園はどこもいっぱいです。日が当たらないマンションにある園庭のない託児室や、雑多なショッピングモールの一角にある狭い部屋、そんなところに子供を通わせるのはためらわれます。だから、時間はかかりますが自転車で遠くの広い保育園まで送っています。泥遊びもできない環境で育てたくないですから。

しかし、事態はもっと悪化しています。もうすぐ3人目が生まれるんですが、保育園を見つけるのがかなり難しくなっています。妥協するしかない、いえ、妥協しても保育園に入れるかどうか、というひどい状態です。

小学校も大変なことになっています。子供の数が多すぎて、校舎に入りきれません。校庭を潰して校舎を増築しています。マンモス校です。こんな過密な環境で育つ子供がどんな風に成長していくのか、心配でなりません。

子供を預けてから、仕事に行くわけですがこれがまた大変です。改札に行列ができるんですよ。都心へのアクセスがよいと人気の武蔵小杉ですが、電車に乗るまでがこんなに大変では、意味がないですね。

…と。

Next: 今の日本で「住みやすい街」に住むために最優先すべきこと

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