当マガジンは日経平均の妥当な水準として統計的処理で求めた理論株価をもとに、足元の相場の位置づけを評価する材料を提供するものです。原則として日経平均と理論株価の位置関係を示すグラフと表に若干のコメントを合せて毎週1回配信いたします。皆様のより良い投資成果のための一助にして頂ければ幸いです。
※「理論株価」についてはこちらをご覧ください。(『投資の視点』日暮昭)
プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。
2/10時点の理論株価は1万8666円、足元の相場は割高感を解消した
今期業績「過去最高益」を達成する情勢
今期の業績は過去最高益を達成する情勢です(2月11日付け日本経済新聞)。日経平均ベースの予想EPSも直近の2月10日に144円台をつけ昨年来続いてきた135円前後の水準から一段とシフトアップする形がはっきりしてきました。
下図は日経平均、理論株価、通常変動の上側の推移に日経平均ベースの予想EPSと米ドルレートを合わせたグラフを直近の2月10日まで延長したものです。
日経平均、理論株価、通常変動の上側と業績、為替の推移
2016.10.3~2017.2.10
緑線の予想EPSは今期の通期予想の発表が本格化する2月に入ってから急上昇していることが分かります。一方、為替は落ち着いた動きを続けていることで、業績の上方修正に引き上げられる形で理論株価そして理論株価に連動する通常変動の上側が併せて上昇しています。日経平均は1月末以降、300円余り上昇していますが理論株価と通常変動の上側はそれを上回って上昇しており、高値警戒域への距離はむしろ拡がっています。
こうした相場評価の視点をより直接示すのが以下のグラフです。下図は日経平均と理論株価とのかい離率に注目し、かい離率でみた通常変動の上側との距離、そして相場反転の可能性が一段と高まる変動範囲の上限を併せて示しています。
かい離率の推移と通常変動の上側、変動範囲の上限
2016.10.3~2017.2.10
紺色の線がかい離率、黒色の横線がゼロ、すなわち理論株価と日経平均が一致することを、赤色の線が通常変動の上側と下側の位置を示します。紫色の線が変動範囲の上限です。直近の2月10日のかい離率は3.82%、通常変動の上側は5.05%、下側は─5.21%で変動範囲の上限は10.17%です。
日経平均は昨年のトランプ・ショック以降、理論株価を上回るペースで上昇したことでかい離率はゼロから通常変動の上側に向かい、12月8日に到達しました。その後、一月あまりこの境界を挟んで推移してきましたが、トランプ大統領の就任後に一時上抜けの気配を見せた後、米国への入国制限の発令などで相場は下落、また2月以降は業績の上昇による理論株価の急上昇によって直近ではかい離率は通常変動の上側を下回る位置となっています。
統計的な基準から評価すると、足元の相場は割高感を解消していると言えます。
『投資の視点』(2017年2月13日号)より一部抜粋
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