「実態がない」ものはいつでも取引を止められる
現在ビットコインが使える場所は、前述のウェブページによると、ビックカメラ、エイチ・アイ・エスの一部店舗、飲食店や歯医者などとされている。私の記憶では、最も早く受け入れを表明した中に、キプロス大学の授業料があった。どこも、受け入れることを止めると言えば、止められるところばかりだ。
JPモルガンチェースのCEOは仮想通貨を「詐欺」と呼び、先週にはソシエテジェネラルのCEOも「仮想通貨はその匿名性ゆえに未来がない」とした。
確かに、通貨の裏書は政府だ。電子マネーの裏書は使用者自身の現金か信用力だ。商品券やポイントカードなどは発行企業の信用力である。仮想通貨は、信用調査機関が調べようにも実態がない。「お好きにどうぞ」というやり取りだ。
仮想通貨のゴールドラッシュがやってくる?
「仮想通貨の“ゴールドラッシュ”がやってくる」という記事を目にした。
「仮想通貨はすべての取引を取引台帳に記録するのですが、膨大な演算処理をしてすべての取引を正確に検証しなければなりません。その記録・更新作業が『マイニング』です。その際、もっとも早く演算に成功した人に報酬として仮想通貨が支払われる仕組みになっています。“クイズ”に正解したら賞金がもらえるイメージですね」<中略>
「このASICマシンは1台あたり『550メガハッシュ』という採掘能力で稼働しています。5台購入するのに350万円かかりますが、年間約586万円、電気代を引くと約515万円を採掘できる能力があります。年利147%ですから、8~9か月で元本が回収できる予定です」
こういう記事を読むと、私は仮想通貨の行く末に不安を覚える。
原油先物を比較に挙げよう。A氏が原油先物を買って儲けたとする。理由は、原油が値上がりしたからだ。では「誰が」原油に資金を払うことで、A氏に利益をもたらしたか? それは、電気を使った「あなた」だ。自動車に乗った「あなた」だ。世界中の人が何らかの形で原油の購入資金を支払い、生産者へのコストも支払ったために、A氏が儲けることができた。
では、仮想通貨の「マイニング」で儲かるのは何故か? 買った人が儲けられるのはなぜか? 何も生産しないものに、場所代・マシンや電気代・人件費を支払っても儲かるのはなぜか? それは、新たな参入者が資金をつぎ込んでくれているからだ。何かに似ている? そう「ネズミ講」だ。