著名ヘッジファンドの“復活”はどこまで本物か?
著名ヘッジファンドの一部は、今年に入ってから予想外の復活を遂げています。
少なくとも過去4年で最高の運用実績を上げているとみられています。それも堅調な金融市場のおかげといえます。
大手のヘッジファンドの中には、年初から10月末までの運用成績が20%以上に達したものも出てきているといいます。
例えば、ジャフリー・ウッドリフ氏の旗艦ファンド「クオンティテーティブ・インベストメント・マネジメント」は短期の株式投資で68.3%の成績を上げています。このファンドの規模は40億ドルですので、かなり大きいのですが、相当高いパフォーマンスといえます。
また117億ドルを運用するロビンス氏の「グレンビュー・キャピタル・マネジメント」のリターンも21%と高率です。このファンドは、15年と16年にはいずれも損失を出していたといいます。
やはり、この数年間はヘッジファンドにとって、非常に難しい相場だったのですね。
一方、200億ドルを運用するコールマン氏の「タイガー・グローバル・マネジメント」は、中国のハイテク企業への投資が奏功し、10月末までのリターンは34.5%といいます。
また、120億ドルを運用するラフォン氏の旗艦ファンド「コートゥー・マネジメント」は、米国のハイテク関連株への投資で成功し、29.3%のリターンを稼いでいます。
市場平均からみれば不満なリターン
比較対象となるS&P500の年初から10月末までの上昇率は15%です。これに対して、ヘッジファンドの指数であるHFRI指数は7.2%の上昇で、リターンはS&P500の半分以下です。これでも13年以降で最も高いといいます。しかし、投資家からすれば、普通に株式指数に投資していた方がよかったということになりますね。
上記のように、一部のファンドの成績は改善していますが、市場平均からみれば、かなり不満であると言わざるを得ません。好成績を上げているファンドは限定的ですし、ヘッジファンド業界全体が復活したとは言えないでしょう。
ヘッジファンドは手数料が高いですし、運用の不透明さもあります。機関投資家が手を引くのも当然でしょう。しかし、ヘッジファンドサイドは、手数料が指数連動型ファンドに比べて高いのは、市場の急落に耐えられるようにポートフォリオを分散しているためと反論しています。
これは確かに正しいと言えます。
今後、経済状況が悪化し、金融市場が軟調に転じれば、復活するヘッジファンドが増える可能性があります。しかし、その場合には、まず投資家が痛手を受けますので、資金を既存のファンドから引き上げます。これが下げを加速させます。そうなると、ヘッジファンドへの投資を行う余裕はなくなります。
リーマンショック時には私も、運用していたファンドの成績が抜群に良かったのですが、投資家の方が疲弊してしまい、誰も投資してくれる状況にはありませんでした。
このように考えると、ヘッジファンド投資が増えていくのはかなり難しいと感じます。
確かに、ヘッジファンドの存在には理由があります。その価値もあると思います。市場の好調さがいつまでも続くとは限りません。ヘッジしながら投資を行っているヘッジファンドの存在は、今後もことあるごとに注目されるでしょう。
しかし、そのためには、安定的なリターンを上げ続ける必要があります。昔も今も、ヘッジファンドへの要求は厳しいですね。