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「佐川」は「ヤマト」に勝てるのか?今年最大の大型上場(SGHD)のポイント=栫井駿介

利益:佐川の方が一枚上手

規模では水を開けられた佐川ですが、利益を見ると景色は一変します。佐川の昨年度の営業利益は494億円ですが、ヤマトは348億円しかなく逆転が生じます。売上高営業利益率にすると5.3%対2.4%と、2倍以上開いてしまいます。

ヤマトに関しては、昨年度未払い残業代を支払ったことにより220億円の一時的な費用が発生していますが、それを除いても営業利益率は3.9%と佐川に劣ります。Amazonへの対応方針の違いが、そのまま利益水準にも反映されているのです。ここだけ見れば、Amazonから撤退した佐川の方が一枚上手だったように思えます

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急増する宅配便の需要に対し、ヤマトの現場は悲鳴をあげました。このままでは「ブラック企業」のそしりを免れないと考えたヤマトは、ようやく労働条件の改善に乗り出しました。未払い残業代の支払いもその一環です。大口の取引先に対しても窮状を見せることで、値上げをしやすくしようとしている狙いも見えます。

もっとも、ここまで問題が大きくなったのはヤマト自身の責任でもあります。取引先への値上げ要求はビジネスとして当たり前のことですし、海外では一般家庭への再配達は有料が普通です。それを「サービスが先」との哲学に基づいてないがしろにしてしまったことで、配達員の過剰労働と利益率の低下を招いてしまったのです。あんまり「お人好し」なのもビジネスでは考えものでしょう。

課題と今後の戦略

両社が抱える課題はほとんど共通しています。今後も宅配便の増加が見込まれる中、高騰する人件費や「働き方改革」に対応しながら現場を回さなければなりません。もちろん、株主の視点で見ればそこで利益を出すことが求めます。

働き方に対する社会の目も厳しくなっていることから、これまでのようにとにかく数量を請け負うやり方では成り立たないでしょう。必要なのは配達の単価を上げて配達員に適正な賃金を支払いつつ、一方で効率化を進めてコストを下げることです。

Next: どちらが正しい? 佐川とヤマトでは課題解決のアプローチが異なる

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