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日本人が知らない「トランプ支持」の代償。エルサレム首都認定の何が危険か?=斎藤満

戦争の予感に「親米派」からも強い反発

このトランプ大統領の言動に対して、世界中のイスラム教徒が一斉に反発。中東のイスラム過激派は「インティファーダ(蜂起)」を呼びかけ、反米蜂起を訴えています。トランプ大統領に対するイスラムの反発は極めて強く、テロのリスクも無視できなくなりました。中東における米国の利益を排除せよ、との動きも高まっています。

問題は、これら過激派の動きに留まりません。これまで親米派とされたヨルダン、エジプト、サウジアラビアからもトランプ氏の言動に反発が起きています。ヨルダンは過半の国民がパレスチナ人であり、それだけ今回のトランプ発言には反発の声が大きくなっています。

ヨルダンはシリア内戦において米軍に基地利用を提供し、イスラム国との戦闘においても最大限の協力をしてきましたが、ヨルダンのアブドラ国王にとって、トランプ氏の行動は自身の立場を苦しくする面があるからです。

1967年の第三次中東戦争で東エルサレムはイスラエルに奪われましたが、2013年に結ばれたパレスチナ自治政府との協定により、現在のアブドラ国王はエルサレムのイスラム教とキリスト教の聖地を管理する立場にあります。

そのためアブドラ国王は、今回のトランプ大統領の言動に対して、地域の安定と安全保障を脅かすものと警鐘を鳴らしています。これは少なくとも、これまでの米国との良好な関係が揺らいだことを意味します。

エジプト「トランプ氏はテロを煽っている」

同じく親米の立場にあるエジプトも、シシ大統領がトランプ氏の言動に反発を見せました。またエジプトの議員からは、武器を含め米国製品のボイコットを呼びかける動きが見られます。

いまのエジプト自身、イスラム原理主義の危険にさらされているため、「トランプ氏はテロと戦うと言いながら実は彼らを煽っている」と反発しているのです。

エジプトは最近、ロシア軍戦闘機に初めて領空の通過と基地の利用を認める仮協定を結んでいるだけに、米国はエジプトの動きに対して、これまで以上に神経を使う必要が高まっています。

水面下で進行する「サウジのアメリカ離れ」

そしてサウジアラビアはムハンマド皇太子が、トランプ政権の上席顧問を務めるクシュナー氏と親密に連携しているので、米国やイスラエルとうまく行っているように見えますが、そのサウジもサルマン国王が今回のトランプ氏の言動を強く批判しています。

サウジもエジプトもヨルダンも、いずれも米国依存が強く、本来ならなかなか米国と敵対できない立場にありますが、その彼らをも米国から離脱させることになれば、米国にとっても負担が大きくなります。特に米国の対イラン戦略において悪影響が予想されます。

Next: 「テロを利用する」トランプ大統領が描く中東戦争のシナリオ

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