日本は「トランプとの距離の取り方」を見直せ
クシュナー上席顧問がムハンマド皇太子に接近した背景には、イスラエルのためにサウジの協力を得てイラン攻撃を進めたいとの意向があったと思われますが、今回のエルサレム事件を機に、サウジがトランプ政権やイスラエルに反発し対立するリスクも出てきました。
米国側からすれば、もはやエネルギーは自前で調達できるので、サウジは「用済み」の面があります。それだけ米国はサウジに強く出られる面があり、場合によってはサウジを弱体化し、崩壊させても構わないとの深慮遠謀を指摘する向きもあります。そもそもサウジはイスラム過激派に資金支援をするなど、トランプが敵視するテロリストの温床とも見られています。
その場合、日本の代表的企業が(日本政府が間に立って)サウジのために経済協力を行いビジネスを展開するなかで、サウジの政情不安や経済混乱が生じると、単なるテロ・リスクでは済まない大きなリスクを多くの日本企業が負う羽目になります。
それだけに安倍総理の立場が重要になります。世界の孤児になるのを覚悟のうえで米国、ユダヤ連合に与するか?欧州連合と歩調を合わせてトランプ氏の姿勢を正す方向で動くか?
前者を選べば、サウジ以外でも各地で日本企業がテロ・リスクにさらされます。後者となれば、中東全般で日本企業が狙われるリスクは低下しますが、それでもサウジの混乱には巻き込まれるでしょう。
トランプ氏の世界での孤立が、日本企業まで巻き込むリスクがあるだけに、安倍総理は「トランプ大統領との距離の取り方」をよくよく考えるべき時期に来たと思います。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年12月14日)
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金融・為替市場で40年近いエコノミスト経歴を持つ著者が、日々経済問題と取り組んでいる方々のために、ホットな話題を「あらかると」の形でとりあげます。新聞やTVが取り上げない裏話にもご期待ください。