ステップ3:設備投資をして携帯基地局を建てる
仮に楽天に周波数が割り当てられることになれば、最大6,000億円の資金を調達して設備投資を行い、携帯電話の基地局を建てていくことになります。
この基地局を建てる際に重要になるのが、「カバー率」と「効率性」です。
例えば、東京の都心部のような場所では基地局の密度を高くする必要があるでしょうし、人口密度の低い地方では可能な限り基地局を建てないというのが経済合理的な発想でしょう。
上で述べたように、楽天モバイルがフルMVNOとして楽天MNOとドコモMNOの両方に接続が可能になるとした場合、楽天MNOとしてはピーク時間帯のアクセスが多いエリアだけに基地局を立てていくことが最も合理的です。
というのは、ライトMVNOからドコモMNOへの支払い金額は、MVNOが利用するピーク時の回線の太さによって決まっています。従ってMVNOから見ればピーク時のドコモMNOへのトラフィックをできるだけ抑えることが経済的には重要です。
携帯電話の通信のピークは主にランチの時間帯と深夜の時間帯になりますので、これらの2つの時間帯で人口が密集している場所から優先的に基地局を立てていくことになると考えてよいでしょう。
ステップ4:楽天MNOとドコモMNOを自動的にスイッチ。トラフィック最適化を始める
最後に、ここまで来れば楽天モバイルがフルMVNOとして自社で発行したSIMカードからのトラフィックの最適化を、楽天MNOとドコモMNOの間で機械的に行っていくことになるでしょう。
具体的には上で書いたように人口が密集してるエリアや、トラフィックが多い時間帯は自社の楽天MNOに多くのトラフィックが流れるようにし、逆に地方などにおいてはドコモMNOに多くのトラフィックを流していくことになるでしょう。
ここで、勘の良い方であれば出てくる質問が1つあると思います。それは、「もしドコモがMNOとして楽天MVNOとの接続を拒否したらどうなるか?」という議論です。
結論から申し上げると、ドコモが特定のMVNOとの接続を拒否するのは現時点では相当難しいと考えています。これがもしソフトバンクやKDDIが相手であれば、特定のMVNOとの接続を拒否したり、契約条件をMNO側に有利な形にすることもまだ少しは可能かもしれません。
しかし、総務省の方針で過去に国有会社として設備投資を行なったNTTドコモはMVNO業者に対して回線を開放するように国から「指導」されています。
さらに前述のとおり、IIJは既にドコモMNO回線を利用してフルMVNOになることが合意されているので、IIJはよくて楽天はダメだというロジックは、現在のNTTドコモのポジションからすると相当厳しいことになるはずです。
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