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楽天が挑む「第4の携帯会社」への苦難の道、楽天経済圏の野望とは?=栫井駿介

携帯キャリア参入は二重に利益を圧迫

楽天経済圏の拡大が携帯キャリア参入の目的だとするなら、私は投資に見合うリターンを得られるかどうか疑問です。システム投資だけで良い銀行や証券とは異なり、携帯キャリアは基地局や販売店などの莫大な投資を必要とします。ソフトバンクですら、ボーダフォンの買収によりようやく参入できた事業です。

価格は既存キャリアよりも引き下げなければならず、そこにポイントも付与するとなるとますます楽天市場の利益を圧迫するでしょう。設備投資とあわせて二重に利益を圧迫し、一体どこでリターンを得られるか、少なくとも現時点において想像ができません。

順調な金融事業や事業拡大により、この先も成長が見込まれる会社です。しかし、楽天市場はライバルの攻勢が激しく、苦戦しています。金融事業も、マーケット状況により収益が大きく増減するため、決して安泰ではありません。

そこへ、数兆円にのぼる巨額投資を行わなければならないとすると、リスクは決して小さくありません。2019年中の事業開始を目指しているということですが、それまでは巨額投資の懸念が常につきまとい、株価に蓋をする可能性があります。

楽天スーパーポイントを基軸とする「楽天経済圏」は非常に面白いものがあります。しかし、その根本はポイントによる割引率や商品価格の安さに繋ぎ止められているものであり、価格競争に巻き込まれやすいものと考えられます。

携帯キャリアに進出した先の展開は、もしかしたら経営陣には見えているかも知れませんが、少なくとも私には利益が増えるイメージが湧いていません。今後の状況を注視していきたいと思います。

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バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2017年12月26日号)より
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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