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【展望】注目イベント多数で警戒ムードも、市場は徐々に明るさを取り戻そう=馬渕治好

今週は注目イベントが多いです。米国の予算教書発表、FOMC、債務上限復活やオランダ総選挙に加え、週末ドイツでのG20財務相会合で為替が材料になる可能性が強まっています。(『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』)

※本記事は有料メルマガ『馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』2017年3月12日号の一部抜粋です。毎週いち早く馬渕氏の解説をご覧いただくには、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。市場急変時には号外の配信もあります。

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」2017/3/12より

過ぎし花~先週(3/6~3/10)の世界経済・市場を振り返って

<日本株は為替で一喜一憂、国内機関投資家の売りで日経平均が不振、新興市場は堅調>

(まとめ)
先週は、日本株については、また為替動向に一喜一憂する展開になってしまいました。その背景としては、円相場をはじめとする外部環境ばかり気にする国内機関投資家の多くが、決算期末が迫ったということもあって売りを出し、それが日経平均株価や東証一部上場の代表的な企業の株価を、圧迫したためです。

米ドル円相場については、週の前半は動意に乏しく、それが国内株価の上値を抑えたわけですが、米ADP雇用統計の好調さや、ECBドラギ総裁の発言もあって、全般的に円安気味の推移となり、そのため週後半の国内株価が反転上昇する展開となりました。

ただ、米金利の上昇期待を早めに織り込んだためか、週末の米雇用統計は予想以上に好調でしたが、材料として息切れし、米ドル円相場は反落して週を終えています。

(詳細)
先週は、日本株については、週前半は米ドル円相場がやや円高気味だったため株価が冴えず、週末にかけては円安が進んだため株価が上がるといった、為替動向に一喜一憂する展開となってしまいました。

その背景としては、国内機関投資家の多く(すべてとは思いません)や一部の外国人投資家が、円相場の動向や海外要因など、外部環境ばかりを気にして(個々の国内企業の収益の堅調さをつぶさに調べて判断するよりも)、慎重な姿勢を示したことが挙げられます。また、国内機関投資家にとっては、3月の決算期末が迫っているため、決算対策の動きが、特に週前半の株価を抑えたものと推察されます。

こうした国内機関投資家の足元の動向や、それがなぜとりわけ日経平均株価を抑圧したのかについては、この後の「盛りの花」で詳述します。

米ドル円相場は、週前半は特段のイベント等がなく、先週米連銀高官の諸発言で盛り上がった早期利上げ期待も材料としては一巡して、やや米ドル安・円高気味の推移となりました。しかし週央から週末にかけては、米ドルのみならず他の外貨も含めて、外貨高・円安方向に転じました。円安が週後半に進んだ要因としては、下記のようなものが挙げられます。

まず、3/8(水)発表の、米国の2月のADP雇用統計で、雇用者数の前月比について、事前には18.7万人増が見込まれていたところ、実際には29.8万人増と、予想を大きく上回りました。このため、3/10(金)発表の2月雇用統計における非農業部門雇用者数が、当初のエコノミストの予想平均値では前月比18.5万人増となっていたものが、このADP雇用統計の好調さを受けて、20.0万人増に上方修正され、雇用増の期待が盛り上がりました。

続いて、3/9(木)に開催されたECB(欧州中央銀行)理事会では、前号のメールマガジンで予想した通り、金融政策の変更は全くありませんでしたが、声明から「目標達成に向け正当化されるなら、理事会は利用可能なあらゆる措置を利用する」という文言が削除されました。理事会後の記者会見で、ドラギ総裁は、わざわざ削除されたことを自ら指摘し、その理由として緊急性がなくなったから、と述べました。

つまり、ユーロ圏経済がデフレリスクにさらされていたため、場合によっては緊急にどんな措置でもやろうという構えを取っていたが、その必要が薄れた、という意味合いです。これを受けて、欧州通貨相場が上昇しましたが、欧州通貨買い・円売りが、全般的に他通貨に対しても外貨高・円安を引き起こしました。

こうした欧米の金利先高観の台頭あるいは先安観の払しょくで、外貨高・円安が進んだ形ですが、そうしたテーマを市場で早く消化しすぎたためか、週末にかけては円安が息切れしました。

実際、注目されていた、3/10(金)発表の米国の2月の雇用統計は、内容は極めて強いものでした。まず失業率は、1月の4.8%から2月の4.7%に低下しました。非農業部門雇用者数前月比は、前述のように、直前に20.0万人増との予想に上方修正されていましたが、結果は、さらにそれを上回る23.5万人増でした(1月の数値も、22.7万人増から23.8万人増に、上方修正)。

しかし、円安の動きが息切れしたためか、雇用統計で一旦米ドル買いの材料が一巡したと解釈されたためか、一時は115.50円近辺まで進んだ米ドル高・円安は、114.75円辺りまで反落して週を終えています。

この他の材料としては、3/7(火)に、豪州準備銀行の理事会が開かれましたが、当メールマガジンの予想通り、金融政策の変更はありませんでした。

また先週は、EIA(Energy Information Administration、米エネルギー情報局)が公表したいくつかのデータにより、原油価格の下落が進みました。まず3/7(火)には、短期エネルギー見通し3月号月報を公表し、そこで2017年と2018年の米国の原油生産見通しを上方修正したため、それが需給緩和思惑を引き起こして、WTI原油先物価格(WTIについては、この後の「理解の種」もご覧ください)を軟化させました。

さらにEIAは、3/8(水)に週間在庫統計を発表しましたが、3/3(金)時点の原油在庫は9週間連続の増加で、5.2839億バレルに達しました。この水準は、統計始まって以来(1982年以来)の最高水準です。これも、WTI先物価格の押し下げに働き、1バレル50ドルを割り込んで週を終えました。

ここで、先週の主要な株価指数の騰落率ランキング(現地通貨ベース)をみてみましょう。
騰落率ベスト10は、エジプト、ベネズエラ、スペイン、ベルギー、オランダ、TOPIX、チリ、オーストリア、韓国、日経平均でした。欧州主要国がいくつか含まれていますが、これは前述のドラギ総裁の発言が、欧州経済が最悪期を脱しつつあるとの期待を広げたためと考えられます。また円安を受けた週後半の株価上昇で、日本株も上位にランクインしました。

ワースト10は、ロシア、ペルー、ブラジル、アルゼンチン、ポーランド、タイ、ハンガリー、フィリピン、イスラエル、パキスタンでした。

外貨の対円相場の騰落率ランキングでは、ベスト10は、ブルガリアレフ、デンマーククローネ、ユーロ、チェココルナ、クロアチアクーナ、イスラエルシェケル、ルーマニアラウ、スウェーデンクローナ、インドルピー、アルジェリアディナールと、欧州通貨が多いです。

ワースト10は、ノルウェークローネ、ニュージーランドドル、ロシアルーブル、ミャンマーチャット、タイバーツ、南アランド、英ポンド、アイスランドクローナ、チリペソ、ブラジルレアルと、英国やノルウェーといった一部欧州諸国も含めて、産油国通貨が不振でした。

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