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小さなバブル崩壊を「調整」と呼ぶ金融世界の恐ろしさ=田中徹郎

大きい風船は大きくはじけます。今回のバブルはまだ十分成長しないうちにはじけたというのが僕の考えで、この急落は世界経済にとって幸いではなかったでしょうか。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

「調整」で済んだ今回の急落。もっとバブルが膨らんでいたら…?

バブルはまだ小さいうちに破裂した

小さな風船は小さくはじけ、大きな風船は大きくはじける。難しい物理学の知識がなくても、だれもが知っている現象です。

金融の世界のすべてが物理学で説明できるとは思いませんが、ことバブルに関していえば、この風船の事例と似た性質をもっているように僕は思います。

バブルがまだ小さいうちに破裂すれば、その被害は少なくすみ、逆に大きく育ってから破裂すれば、その影響は甚大なものになるということです。

いま僕は先週頭から続いている、世界的な株価急落を意識しながらこのメルマガを書いています。

小さなバブルは小さくはじけ…。大きい小さいは主観ですが、僕の感覚から言えば、今回の株バブルは比較的小さかったのではないかと思います。

トランプ大統領の就任直前からアメリカ株は上昇し続けましたが、減税やインフラ投資拡大など、大統領の政策に対する期待もあったでしょうし、アメリカ企業の業績拡大が続いていることも株価の支持要因だったでしょう。

またよく言われるように、経済の好調さのわりには長期金利が低く抑えられており、株価にとって好ましい環境が続いていたということもあったでしょう。

それらが合わさって、アメリカ株を本来あるべき相場帯から上に引っ張り上げ、今回の株式バブルは徐々に膨らんできたといえるのではないでしょうか。

ただし成長した風船のサイズを見ると、どう考えても先の金融ショックや、その前のITバブル時の比ではなく、バブルはまだ小さいうちに破裂したといえるのではないでしょうか。

大きなバブルはこんなものじゃない

ちなみにこの「小さなバブルの崩壊」のことを、金融の世界では上品に「調整」と表現します。

これに対して大きなバブル崩壊の怖さは、単に株価に与える影響が大きいというだけではなく、実体経済にまで悪影響を及ぼし、やがて景気後退を招くという点ではないかと思います。

「景気は気から」などとよく言いますが、株価の下落→消費者心理の悪化→消費の縮小→企業業績の悪化→雇用の悪化→消費の縮小→企業業績の悪化…。

このような経路で循環的に実体経済は悪化し、やがて景気後退に至るわけで、これは先のショックで世界が経験した通りです。

今回のバブルはまだ十分成長しないうちにはじけたというのが僕の考えですが、もしその見方が正しいとすれば、今回の急落はむしろ世界の経済にとって幸いではなかったでしょうか。

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