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長年連れ添った配偶者に居住権…超高齢化社会に対応した新・相続ルール=山田和美

現在、相続のルールを定めた民法の改正に向けた審議が進んでいます。改正ポイントはいくつかありますが、今回は「配偶者居住権の創設」について解説します。(『こころをつなぐ、相続のハナシ』山田和美)

プロフィール:山田和美(やまだかずみ)
1986年愛知県稲沢市生まれ。行政書士、なごみ行政書士事務所所長。大学では心理学を学び、在学中に行政書士、ファイナンシャルプランナー、個人情報保護士等の資格を取得。名古屋市内のコンサルファームに入社し、相続手続の綜合コンサルに従事。その後事業承継コンサルタント・経営計画策定サポートの部署を経て、2014年愛知県一宮市にてなごみ行政書士事務所を開業。

“争族”と老後不安の解消に期待!創設される「配偶者居住権」とは

約40年ぶりの「相続ルール」改正

現在、相続のルールが定められている民法の改正に向けて、審議が進んでいます。相続ルールの改正は、約40年ぶりのこと。そこで、しばらく当メルマガでも、改正情報を解説していこうと思います。

改正ポイントはいくつかあるのですが、今回はまず「配偶者居住権の創設」について。配偶者居住権とは、読んで字のごとく、配偶者が居住する権利のことです。

改正のポイント「配偶者居住権の創設」

現在、この「配偶者居住権」には、2つの種類が検討されています。

それは、次の2つです。

  1. 短期の配偶者居住権
  2. 長期の配偶者居住権

<短期の配偶者居住権とは>

まず、短期の配偶者居住権について。これは非常にシンプルで、その建物の所有者である夫または妻が亡くなった後も、6ヶ月はその建物に住み続けられるという権利のことです。

こちらの制度があれば、まずは相続が起きてすぐに住み慣れた家を出ていく必要はなくなります。仮に、次に解説する長期の居住権が得られない場合でも、「半年間」という次の住処を探すための時間が得られるというイメージですね

<長期の配偶者居住権とは>

そして、もう1つは、長期の配偶者居住権。こちらは少し複雑なのですが、まず前提として、自宅を「所有権」と「配偶者居住権」の2つに分けて考えようというものです。

「所有権」というのは、使うことはもちろん、売ったり貸したりするのも自由な権利。一方の居住権は、「住むだけ」の権利です。

相続人が配偶者と子である場合、配偶者の法定相続分は2分の1になります。「法定相続分」とは、ここでは、相続で争ったとき、最大限主張できる権利だと考えてください。

また、相続する財産の大半が自宅の不動産という人も少なくありません。これまでの制度では、配偶者が安定してその家に住むには、その家を相続するというのが原則でした。

しかし、前述のとおり、「自宅の土地建物の評価が財産の大半を占めている」という場合、配偶者が自宅をもらうと、もうそれだけで法定相続分を取り切ってしまい、預貯金は相続できないということもありました。

これでは残された配偶者の生活が不安定になるということで、創設が検討されているのがこの制度です。

仮に、「その土地建物がほしいわけではなく、単に存命中はその家に住んでいたい」ということであれば、住むだけの権利に「配偶者居住権」という新しく名前をつけて、その権利だけを相続するという選択肢をつくるということです。

Next: 住む権利に加えて、現金も相続できる可能性が出てくる

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