日経平均が15年振りに2万円を終値で越えたのが今年の4月22日。その後も歴代3番目の長さとなる12連騰を記録するなど依然として好調を維持しています。しかし、「株式投資図鑑」では、日経平均を支えているのは円安なのでいつか来る急落に備えよと冷静な分析を寄せています。
日経平均を支えているのは円安
PERは時価総額を純利益で割ったものだ。
したがって、株価が上がるか利益が下がればPERは上昇し、逆に株価が下がるか利益が上がれば下落する。
今は株価が上がったが、利益も上がっているので、PERが高騰していないという状況である。
つまり、日経平均の値上がりは好調な企業業績に支えられているのである。
逆に言うと、企業業績がおぼつかなくなれば、それだけ株価が下がる可能性が高い。
では、企業業績は何に支えられているのかと言うと、おおざっぱに言えば円安である。
日経平均に採用されている大企業の多くは製造業なので、輸出の増加や海外販売の円換算を通じて業績が引き上げられる。
今の日経平均が継続するためには、円安が続かなければならない。
このような状況で出てきたのが、先日の日銀・黒田総裁の「ここからさらに円安はありそうにない」という発言である。
趣旨としてはファンダメンタルズ(経済実態)を表す実質実効為替レートについてであり、表面的な為替の先行きを占ったものではないという。
為替レートの動き方
経済学的には、為替レートは各国の金利や物価水準によって決まる。
相対的に高金利または高インフレの通貨は安くなるというわけだ。
アベノミクス前においては、日本は低金利・低インフレ(デフレ)だったので、円高が進んだ。
一方、アベノミクスでは、デフレ脱却を目指したことから期待インフレ率が上昇したため、円安が進んだのである。
そして、今市場で注目が集まっているのが、米国がいつ利上げをするかということである。
先ほど高金利通貨は安くなると言ったが、これは長期で見た場合であって、短期的には高い金利を求めてドルが買われることにより通貨高が進む可能性が高い。
米国が利上げした場合、ドルが高くなり、円は相対的に安くなるというわけだ。
この状況は2000年代初旬~中頃までと酷似している。この時期も米国の金利が高く、ドル高が継続した。しかし、2008年にリーマンショックが起こると、ドルから資金が流出しドル安となった。そして、ファンダメンタルズ的には高いと考えられる円が買われることで円高が進んだのである。
いつか来るショックに備えよ
ファンダメンタルズと表面的な為替レートが乖離すればするほど、リーマンショックのように「何かあったとき」に、急激にファンダメンタルズの方に揺り戻しが来る可能性が高い。もちろん、それが何年後に来るかは誰も分からないが、このまま円安が進めばいつかは急激な変化が来るかもしれないということだ。
円高になれば日本企業の業績は軒並み悪化する可能性が高い。
さらに悪いことに、そのときは世界的な景気が悪化したときである可能性が高いので、為替を抜きにしても業績は思わしくないはずだ。
そうなると、日経平均は円高と景気悪化のダブルパンチを受け、他国以上に下落してしまう可能性がある。
日経平均の変動幅が他国に比べて大きいのはこれが原因だ。
個人投資家ができることは、いつか来るかもしれない日経平均の急落に備えた資産配分をすることである。インデックス投資は比較的安全と言われるが、日経平均だけを見ると決してそうではないというのが僕の見解だ。
『株式投資図鑑』(2015年6月19日号)より一部抜粋
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