経済停滞を予感させる2つのニュース
しかし、最近のニュースを見ているとこの流れが停滞する可能性が高まっているのではないかと感じています。
ひとつは、金融緩和の終了です。米国ではすでに利上げに舵を切っており、欧州も続く様子を見せています。過剰な金融緩和はバブルを生みやすく、現に株価指標は割高感を示しています。中央銀行にはバブルの崩壊による長期停滞を最も恐れるため、緩和を終了することで「いつまでも株価が上がり続けることはない」という市場への警鐘を鳴らしているのです。
もうひとつは「米中貿易戦争」です。トランプ政権は、中国からの輸入関税を引き上げることを宣言しましたが、これにより世界経済が転換点を迎える可能性があります。
中国からの米国への輸出の大半は「機械類」であり、最大品目が「携帯電話・端末」、つまりスマートフォンです。これらは中国企業が米国へ売り付けているわけではなく、アップルをはじめとする米国企業が中国の工場で生産されたものを「逆輸入」しています。
スマートフォンなどの製品の関税を引き上げると、困るのは米国の消費者です。価格が上がり、これまで経済をけん引してきた消費は鈍るでしょう。最大の消費国である米国の需要減少は世界的にも甚大な影響があります。中国の生産も鈍化を余儀なくされるでしょう。
これから起きるのはこの10年の「逆回転」
そうなってしまうと、ここから起きることはこれまでの10年の「逆回転」です。消費が鈍ると在庫が増えるため生産が減少し、生産が減少すると労働者の賃金も減少します。すると消費はさらに減少し、「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。
金融緩和も縮小方向となっているため、株価の下支えは当分期待できないでしょう。景気の悪化が指標に現れからでないと、中央銀行はなかなか動くことはできません。
もっとも、このシナリオは通常の景気循環の範疇であり、米中貿易戦争はその引き金にすぎません。景気は自然に循環するものであり、行きすぎた株価はどこかで必ず調整が入ります。問題は、それがいつになるかということだけです。
歴史的に考えても、10年間の景気拡大はすでに最長レベルであり、米国市場のPERは20倍を超えて平均的な水準の15倍を大きく上回ります。いつ転換点が訪れてもおかしくないということは頭に入れておくべきです。