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本当は「仲良し」の米国と中国。貿易戦争は市場混乱を狙った出来レースだ=江守哲

米中の関税合戦が激しさを増しており、投資家の不安心理が解消されるにはまだまだ先は長いようです。両国の動きと狙いを整理しながら、今後の市場動向を考えます。(江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて

本記事は『江守哲の「投資の哲人」~ヘッジファンド投資戦略のすべて』2018年4月9日号の一部抜粋です。全文にご興味をお持ちの方はぜひこの機会に、今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:江守哲(えもり てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業。住友商事、英国住友商事(ロンドン駐在)、外資系企業、三井物産子会社、投資顧問などを経て会社設立。「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」。商社・外資系企業時代は30カ国を訪問し、ビジネスを展開。投資顧問でヘッジファンド運用を行ったあと、会社設立。現在は株式・為替・コモディティにて資金運用を行う一方、メルマガを通じた投資情報・運用戦略の発信、セミナー講師、テレビ出演、各種寄稿などを行っている。

強硬姿勢を取り続ける米国と中国の思惑。ダウ平均の想定レンジは

投資家心理は改善せず

米国株はまだまだ不安定な状況です。6日の市場では、米中間の貿易摩擦激化への懸念が再び高まり、急反落しています。

トランプ米大統領は、中国からの輸入品に対する1000億ドル規模の新たな追加関税を検討すると表明しました。これを受けて、中国商務省は急きょ記者会見を開き、「1000億ドルの課税リストが発表されれば、直ちに強力な反撃に出る」と宣言しました。

米中の貿易摩擦激化に対する市場の懸念は、前日までにロス商務長官ら複数の米高官が回避の可能性を示唆したことから後退していたものの、両国が態度を硬化させたことで再燃しました。

リスク回避ムードが広がる中、ダウ平均の下げ幅は一時767ドルまで拡大するなど、大きく売られる場面がありました。

NYダウ 日足(SBI証券提供)

NYダウ 日足(SBI証券提供)

このように、投資家の不安心理が解消されるには、まだまだ先は長いようです。

トランプ氏「いま貿易戦争をしているわけではない」

とにかく市場には、トランプ政権による通商問題への対応に不安が広がっています。

そのうえで、この不安を単なる憶測として見過ごすのか、むしろ深刻な問題に発展する可能性があるのかを、見極められない状況になっているといえます。

トランプ米大統領は6日朝、ラジオのインタビューで、「米国は既に貿易戦争に敗北した。いま貿易戦争をしているわけではない」と強調しました。

トランプ大統領はツイッターでも「その戦争にはもう何年も前に、この国の代表だった軽率な、言い換えれば無能な首脳たちが敗れてしまった」と繰り返し、中国の知的財産権侵害を理由とする制裁措置の正当性を訴えました

また、米中の貿易摩擦が深刻化する現状について、「われわれは少し損失を被るかもしれないが、長い目で見ればより強い国になるだろう」と語りました。

「自動車輸入規制」の強化も検討中か

さらにウォールストリート・ジャーナルは、「トランプ政権が自動車輸入規制の強化を検討中」と伝えています。

自国メーカーの保護を目的に、厳格化した環境基準の達成を輸入車に求める方策を検討しているというのです。そのうえで、トランプ大統領は、既存法を活かした厳しい排出規制案の策定を複数省庁に指示したとされています。

現時点では計画段階にとどまり、米環境保護局(EPA)当局者が政策の法的根拠づくりに取り組んでいるといいます。しかし、政権内の一部から反発の声が上がるなど、実施に向けて課題が存在するともされています。

Next: ムニューシン財務長官も貿易戦争の可能性を示唆。市場は落ち着くのか?

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