時間の経過とともに「デフレリスク」は増大する
さて、話を日銀に戻しますが、日銀は「金融緩和を粘り強く続けていく」ということもしばしば強調します。
しかしデフレは、時間の経過とともに、最悪の場合は「戦争」という結末を迎えるのです。
ですから、デフレは2年とか3年で終結させ、正常なインフレ率に戻す必要があります。これは、目先の数字の改善とかそういうレベルではなく、国家・国民全体でのデフレ脱却、需給バランスの改善という意味です。
日銀の説明を聞くと、インフレ率がゼロ近辺であれば、これを続けて徐々に改善すれば問題ないのではないか、というように思えます。
しかし、この時間経過は、重大な問題を抱えています。
日銀の年収250万円体験も、2~3年であれば一時的な苦労で済むでしょう。しかし、これが10年とかになってくると、生活の破壊とか貧困化という問題が起きてきます。
つまり、インフレ率がゼロ近辺ということは、プラス・マイナスゼロではなくて、日本で大きなマイナスの蓄積を続けているということです。
例えば、1年ごとに3万円ずつ増えて改善しているというような場合でも、問題は解決していません。年収が253万円➝256万円➝259万円…と少しずつ増えても、低所得状態が継続しているためです。
これは、生活コストがゼロではないためです。衣食住を国家が保証している場合はゼロ金利やデフレでも問題はありませんが、生活コストを国民が負担している場合は、大きなマイナスの蓄積となります。
この生活破壊が、実際に日本国民に起きているということです。
ですから、日銀が「金融緩和を粘り強く続けている」間に、国民の生活は破たんして貧困化に見舞われるということです。
FRBやECBは、デフレの脅威をよく認識していて、機動的な対応をしています。デフレは、長くても2~3年でないと、内乱や戦争を誘発するからです。
かつて、日本でもデフレから戦争が起きた
戦前の日本では、5・15事件(1932年)、2・26事件(1936年)が起き、対外的には1941年(昭和16年)の真珠湾攻撃へとつながっています。1929年のニューヨーク株式市場の大暴落・世界恐慌から、12年後には戦争となっているのです。
この間、国民生活全体という意味では、庶民の経済は改善していませんから、需給ギャップが残ったまま社会が不安定化。つまり、都市部や農村部で、貧しい生活に陥る人が多かったのです。
現在は、2008年のリーマンショックから10年後の2018年となりましたが、国民生活の改善は遅々としています。
これは、「良くなっている」のではなくて、「マイナスの蓄積が膨大になっている」という意味合いの方が大きいです。時間の経過とともに、です。