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株を買うタイミングがまったく違う。データで読みとく「順張り外国人」と「逆張り個人」の行動原理=若林利明

日本の株式市場では「外国人は順張り、個人は逆張り」の傾向があると言われます。彼らはそれぞれ、いつ、いかなる局面で投資を決定し、市場にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?過去6年の主体別投資家動向をもとに、元日本株ファンドマネージャーの若林利明氏が分析します。

外国人と個人の違いとは?元ファンドマネージャーが分析

外国人は業績見通しで、個人は値頃感で売買している

外国人投資家の銘柄物色の特徴と、日本人個人現物投資家の銘柄物色の特徴には際立った違いがあります。

最大の特徴は、外国人投資家は、純粋に好銘柄を業績の展開(利益の伸び)を基準に買い上がってゆく“順張り”アプローチを好むという点です。

これに対して日本人個人投資家は銘柄の業績展開を注目しつつも、購入する株価の位置を第一優先とする“逆張り”アプローチを好みます。

この際立って異なるアプローチは、両者が売買代金でも市場全体の双璧であることもあり、市場の動きに大きな影響を及ぼしています。

ここでは週単位に発表される東証の主体別投資家動向から、一定の条件で括り、2009年以降の外国人投資家の売り買いをレビュー、同期間の日本人投資家との比較で市場の展開を見ました。

■レビューの条件:

(1)一週間で1000億円以上の買い、または売りが四週以上継続した場合を合算。6年間で10回存在。グラフはスタートした初週を表示、合算金額を億円単位で棒グラフで示す。
(2)同期間、この反対行動をとる日本人個人現物投資家の売買代金の実績を比較。
(3)同期間、日経平均の変化、継続した週の数を併記。

上の対象期間の日経平均と継続週の数

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外国人と個人の投資行動をアベノミクス前後で比較すると?

■2009~2011年(前段) 経済落ち込みと企業業績不安のなかで

2008年のリーマンショックから立直りが出来ない相場が2009年も続いているが、その1月からの6週間、継続的売りで14%の下げを記録している。外国人投資家がリーマンショックにより経済の落ち込み、企業業績への懸念から世界中の株式市場で売りに転じたことにより東京市場も急落する。

逆張りの日本人投資家からすれば安く買えるチャンスでもあったが、相場感自体が弱気であり外国人投資家の極端な売りにも基本的に傍観するだけ、僅かに買い越しを記録するが、腰が引けた買いに終始。

2009年の年央、底打ちした市場は外国人投資家に先導される形で回復に向かうが、日本企業の業績予想、円高による落ち込み懸念もあり積極的な買いに入らず。弱気を継続していた日本人投資家はいわゆる“ヤレヤレ売り”が散見される程度。市場全体のこう着感が抜けきれず、売買代金の極端に少ない真空相場の動きの域を出ない

■2012年末~直近(後段) アベノミクス登場。円安と企業業績好調を受けて

外国人投資家は2012年12月より連続18週に及ぶ買い。買い越し額は6兆6850億円に達する。日本人の個人投資家は同期間2兆5000億円の売り越し、その後も外国人投資家の継続買いが生ずるが全体としての売買代金がスケールアップ。前段の停滞相場からの活況相場へと変化

その後外国人投資家は好業績を評価し買いを継続、それに対して日本人投資家は外国人買いが大幅に膨れると、見合う分の大量の売りを行うようになる。結果として、その間の市場上昇率は急速に鈍化(40%~1%へ)、日本人投資家は、外国人が一挙に買い進む相場では積極的に売り逃げる(利益確定)スタンスで市場参加を鮮明化。この売りが市場の上昇を抑えているとも言える状況。

■市場の決定力は外国人投資家に依存している

外国人投資家は常にグローバルな観点に立った行動をします。魅力のある国を買い、魅力のある銘柄を買います。魅力の第一は成長です。

成長株を積極的に購入した後は、同じ東京市場にある周辺業界、市場全体へと物色対象の間口を広げます。一貫して順張りです

日本人投資家(個人現物)は殆どの場合、売りです。市場の上昇を歓迎しながらも外国人投資家に売り向かいます。最近売却額も急激に増大中です。買いに転じるケースは外国人投資家による急激な売りが継続する場合です。

腰が引けた状態で、株価の位置を確かめるように買います。それは銘柄への評価をしつつも株価の位置を気にする打診買いともいえる行動です。株価の位置から入る動きが見られるのです。

筆者プロフィール:若林利明
外資系機関投資家を中心に日本株のファンドマネージャーを歴任。現在は創価女子短期大学非常勤講師、NPO法人日本個人投資家協会協議会委員。世界の株式市場における東京市場の位置づけ、そこで大きな影響力を行使する外国人投資家の投資動向に精通する。著書:「資産運用のセンスのみがき方」(近代セールス社)など。

投資の視点』(2015年8月4日号)より一部抜粋

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