曖昧に作られた「働き方改革法案」
同一労働・同一賃金の法制化を目指している「働き方改革法案」がいう、「非合理な格差」にあたるものが何か。法には具体的な記述がなく、曖昧です。そこで厚労省は、ガイドライン(法案の解釈方法)を出しています。
法の解釈を裁判官ではなく(意図的に曖昧に法を作る)省庁が示す理由は、わが国の法のほとんどは、米国のような国会議員の提案ではなく政府が作るからです。
省庁は普通のことと考えていますが、官僚支配と言われるゆえんが、ここにも表れています。
なお、官僚とくに財務省の高級官僚の意識では、われわれは律令制の中国の科挙(官吏の採用試験)のように、天皇の行政官(行政が天皇から代理権を受けて支配する律令国家)というものです。
このため選挙で選ばれる国会と政治家を、低く見ています。天皇が授与する勲章制に、これが現れています。制度が変わっても、伝統的な意識は、法の細部に現れるのです。
「非合理な格差」とは?
ガイドラインでは、以下のように述べています(原文のママ)。
【時間給が違っても問題なしとされるケース】
定期的に職務内容や勤務地変更がある無期雇用フルタイム労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務内容と配置に変更のないパートタイム労働者であるYのアドバイスを受けながら、Yと同様の定型的な仕事に従事している。B社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における職業経験・能力に応じることなく、Yに比べ高額の基本給を支給している。
分かりやすくしましょう。
「幹部職候補の総合職(配置転換があるという意味)として採用された正社員が、管理職になる目的のキャリアコースの一環として、パートと同じ定型的な作業に従事した場合は、作業能力にかかわりなく、パートの時間給より高くてもいい」ということです。