Yahooと楽天が導入。社員を会社につなぎとめる「株式報酬」は日本に馴染むか?=シバタナオキ

Yahooは取締役や従業員に対して「株式報酬」を与えると発表。シリコンバレーでは一般的な制度ですが、日本でも普及するでしょうか。その仕組みを解説します。(『決算が読めるようになるノート』シバタナオキ)

※本記事は有料メルマガ『決算が読めるようになるノート』2018年5月29日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:シバタ ナオキ
SearchMan共同創業者。東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻 博士課程修了(工学博士)。元・楽天株式会社執行役員(当時最年少)、元・東京大学工学系研究科助教、元・スタンフォード大学客員研究員。

微妙に違うが、狙いは同じ。ヤフー、楽天、シリコンバレーで比較

シリコンバレーでは一般的な「株式報酬」

つい先日、Yahooの決算発表に連動して、取締役や従業員に対して株式報酬を提供する、というアナウンスがなされました。

シリコンバレーでは一般的になっている株式報酬ですが、日本では従業員に対して株式報酬を支払う、というのはまだあまり一般的でないようにも思いますので、今日はその株式報酬の仕組みについて解説していきたいと思います。

ヤフーの株式報酬「総額3.7億円分」106名が対象

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今回発表されたヤフーの株式報酬ですが、対象は取締役2名と、従業員104名、合計が約3.7億円という規模になっています。

対象となっているのが合計で106名ですので、おそらく執行役員の1つか2つ下のレベル、つまり本部長や部長以上の人が対象になっていると考えるのが自然でしょう(参考までにシリコンバレーのテクノロジー企業では、本部長でも部長でもない平社員にも株式報酬が提供されるのが一般的になってきています)。

取締役に提供される分と従業員に提供される分を合わせて平均を計算すると、1人当たり約350万円程度の報酬になります。従業員に提供される部分だけを平均すると、1人当たり約300万円程度の報酬という計算になります。

Yahooの本部長や部長クラスの人の給料がどの程度なのかは私には分かりませんが、仮に年俸が1,000万から1,500万程度だとすると、それにプラスして支給されるのが300万円程度の株式報酬というのは、現金報酬の20%から30%程度に該当すると予想されますので、決して小さなインセンティブではないということだけは言えるでしょう。

ヤフーの「譲渡制限付株式報酬」の仕組み

ではYahooの場合、株式報酬というのはどのような仕組みになっているのでしょうか。少し詳しく見ていきたいと思います。

当社は、2017年6月20日開催の第22回定時株主総会において、本制度に基づき、譲渡制限付株式取得の出資財産とするための金銭報酬(以下「譲渡制限付株式報酬」といいます。)として、付与対象取締役に対して、年額4億円以内(ただし、使用人兼務取締役の使用人分給与を含みません。)の譲渡制限付株式報酬を支給すること及び譲渡制限付株式の譲渡制限期間として3年間から5年間までの間で当社の取締役会が定める期間とすることにつき、ご承認をいただいております。

まず始めに、この株式報酬を支給すると言うこと自体はすでに株主総会で承認されている事案だということが記載されています。

株主総会で承認された内容は、合計が4億円以内であるという点、そして、譲渡制限期間を3年から5年の間で設定するという2点になります。

なお、本株式は、割当予定先である当社の従業員104名に対しては、その引き受けを希望する者に対してのみ発行されることとなり、本新株発行においては、本株式を引き受ける従業員に対して、現物出資するための金銭債権が当社から支給されますので、本新株発行により従業員の賃金が減額されることはありません。今後の付与対象取締役等に対する特定譲渡制限付株式の付与については、本新株発行の効果、各事業年度の当社業績及び株式市場への影響等を斟酌して決定する予定です。

そして、従業員の104名に対しては、あくまで希望者のみが株式報酬を得られる、という仕組みになっています。

実際の株式報酬の提供の仕方は、

  • まず Yahoo が株式報酬として提供する新株を発行し
  • 会社が従業員に対して金銭を提供し
  • 従業員がその金銭で株式を買い取るという流れになっている

と、この文章からは読み取れます

実はシリコンバレーの株式報酬の場合でも同じことが起こるのですが、このようなやり方をしたとしても、税務上のいくつかのハードルがあります。それに関しては、この記事の後半で簡単に触れておきたいと思います。

ヤフーの「譲渡制限期間」とは? いつになったら株を売れるの?

今回のヤフーのケースでは、普通株をそのまま従業員に提供するのではなく、譲渡制限が付いた普通株を提供することになっています(英語ではRestricted Stock Unit、略して「RSU」と呼びます)。

つまり、ある一定期間は譲渡ができないという制限がついた株式になっているわけですが、具体的にどのような制限がついているのか見ていきましょう。

また、譲渡制限期間については、本制度に基づき、2017年5月19日の割当決議により当社の取締役及び従業員に付与された特定譲渡制限付株式と同様、3年間といたしました。

こちらの記載にある通り、3年間は一切譲渡つまり売却ができない株式になります。

(1)譲渡制限期間 2018年7月18日~2021年8月2日

具体的には、2018年の7月18日から2021年の8月2日まで譲渡制限がついています。

(4)当社による無償取得

当社は、譲渡制限期間が満了した時点において譲渡制限が解除されない本株式の全部について、当該時点の直後の時点をもって、当然に無償で取得します。また、付与対象取締役等が譲渡制限期間中に自己都合により退任等した場合など、一定の事由に該当した場合には、付与対象取締役等が当該事由に該当した時点をもって、本株式の全部(当社の従業員の場合は全部又は一部とし、在籍期間等を勘案して譲渡制限付株式割当契約に基づき決定します。)を当然に無償で取得します。

その譲渡制限が解除される前のタイミングで退職をした場合は Yahoo は従業員からその株式を無償で取得することができるという制限がついています。

(余談ですがこの文章にある「当然に」というのはシリコンバレーの常識からすると全く当然ではないので、なぜこのようにきつい言葉を用いて印象を悪くしているのかと少し思いました。なぜこれが「当然」でないのか、も後半で記載します。)

以上がヤフーの株式報酬の概要になりますが、実は Yahooだけが日本で株式報酬を提供しているネット企業というわけではありません。

楽天でも数年前から、生の株式ではなくストックオプションという形ですが、株式報酬を従業員に対して提供しています。

ここでは楽天のケースも比較対象として詳しく見ていきたいと思います。

Next: すべては社員の退職を防ぐため。やや複雑な楽天のケースは?

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