欧州では、FX・CFDなどの商品取引に関する厳しい規制が7月30日から実施されます。ハイレバ禁止、ゼロカット方式の義務付けなど日本にも影響しそうなその内容について解説します。(『今市太郎の戦略的FX投資』今市太郎)
※本記事は有料メルマガ『今市太郎の戦略的FX投資』2018年7月17日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。
いくつかの業者は廃業必至。仮想通貨FXは議論継続中だが…
欧州ではハイレバもボーナスも全面禁止
かねてより欧州証券市場監督局(ESMA)が示唆していたFX、CFDなどの商品取引に関する厳しい規制の内容が本決まりし、この7月30日から実施される運びとなりました。
これにより欧州圏内に本拠地を置くいわゆる海外FX業者は、ハイレバレッジもボーナスの提供も禁止されることになり、バイナリーオプション業者は完全禁止で市場からの撤退を余儀なくされそうな状況です。
今回の規制内容のアウトラインを追ってみました。
規制はかなり厳しいものに
今回ESMAから出された規制は、以下のようなものになります。
- バイナリーオプションをEU経済圏において全面禁止(仮想通貨CFDは含まず)
- 商品のボラティリティの大きさに応じて、必要マージン率を細かく定義(5%~30%)
- ロスカットが発生する必要マージン率の統一
- マイナス残高保護の義務化
- インセンティブトレードの禁止(ボーナスやリベート含む)
- 顧客の損失レベルをリスク報告書に追加
この中でまず目を引くのがバイナリーオプション(通称BO)の完全廃止です。これまでフランスなど多くの欧州域内の国で、キプロスのBO業者が様々な問題を起こしてきたことが起因してきていると思われます。本来はFX自体よりもリスクが限定されるBOが完全廃止ということで、この専門業者は事実上廃業を迫られる状況となっています。
また、日本国内でも一時もめたFXのレバレッジに関して、欧州の新規制では主要通貨ペアは最大30倍、マイナー通貨ペアは20倍となっており、ほとんど日本の規制内容に近いレバに抑えられることが正式に決定しています。
これを受けてキプロスに本拠地を置くIronFXなどは、正式に口座利用者にレバが7月30日取引分から30倍以下に制限されることを通達してきています。
数年前に国内では非常に有名な888倍のハイレバ業者であるXMは、セーシェルに本拠地を置く事業法人を立ち上げ、ハイレバとボーナスの魅力から口座開設してきた日本人投資家を新会社の口座のほうに誘致してきました。その理由が、この規制内容によってようやく理解できたとも言えます。
もちろんボーナスやキャッシュバックも一律全面禁止で、日本の景表法に近い制限がかけられています。
注目すべきは「ゼロカットシステム」の法制化
この規制で非常に注目されるのはこれまで海外系の一部の業者ですでに導入されてきた「ゼロカットシステム」が今回必須の条件として法制化されたことです。
ゼロカットシステムとは、利用者の損失負担はあくまで投入証拠金までで、それ以上の損失が出ても追証の負担を負わないというかなりの消費者保護システムです。相場が暴落しても、海外のFX利用者は追証を負うことがほとんどありませんでした。
これを正式に法制化し、100%業者が履行することになったわけです。
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