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日本経済はすでにインフレ転換…米国やIMFも指摘する「実質賃金」の不気味な上昇

欧米諸国にとって注目の的である日本のデフレ脱却。すでに日本では賃金インフレが始まっており、まもなくハイパーインフレが起こるという見方があります。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2018年7月13日第261号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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賃上げを止めればバブル崩壊? まもなく米国が直面する災厄とは

FRBが警戒する「賃金インフレ」

歴代の米連邦準備制度理事会(FRB)議長がもっとも警戒してきたのは、実は賃金インフレの圧力上昇です。

たとえば、前FRB議長のジャネット・イエレンは、2015年9月にマサチューセッツ大学アーマースト校で行われたフィリップ・ギャンブル記念講演会で、次のように述べました。

われわれは、2008年に勃発した金融危機以来、高度に緩和的な金融政策を維持してきた。

…にもかかわらず、エネルギー価格の下落とドル上昇の影響がインフレ目標を下回る重要な要因となっている。

しかし、われわれは、インフレ率が今後数年間で2%に回復すると予想している。

経済成長が最大雇用への復帰を完了するのに十分なほど堅調であり、長期的にはインフレに傾斜していくことが予想されている。

…私自身を含め、ほとんどのFOMC参加者は、2015年後半にFFレートの引き上げが始まる可能性が高いと予想している。

出典:Inflation Dynamics and Monetary Policy – FRB公式サイト(2015年9月24日配信)

つまり、イエレン議長のスピーチが意味するところは、「賃金インフレ」という言葉を使わないように細心の注意を払いながらも、「インフレが目前に迫ってきているので利上げモードに切り替える」と言ったのです。

賃金インフレ退治のために続けられる「利上げ」

FRBが2008年から果敢に量的金融緩和を進めてきた結果、株価も上昇し続けてきた。

そのため、消費者の間に楽観ムードが漂い始め、旺盛な需要が見込まれる。

結果として雇用は改善し、われわれはインフレの最終ステージに差し掛かろうとしている。

したがって、利上げは焦眉の急(非常に差し迫った危険)である…

出典:同上

結論を言えば、「FRBは、賃金インフレ退治のために利上げを断行せざるを得ない」ということです。

今まではインフレ問題が表面化してこなかった

今まで、潜在的インフレが表面化してこなかった最大の理由は、中国経済の減速と米国自体がエネルギー分散化の方針を固めており、脱石油依存政策を進めてきたからです。

量的金融緩和によって一部の富裕層は資産をますます増やしたものの、その資金は株式市場と優良不動産に向かい、資産バブルを形成しました。

しかし、取り残された残りの「99%」の人々にとって幸いだったのは、世界経済の低迷とエネルギー価格の下落が物価の上昇圧力を抑えてきたことです。

その弊害は、小売業の業績不振となって「小売黙示録」を引き起こしました。

大型小売店チェーンは、採算店だけを残すために大規模なスクラップ・アンド・ビルドに踏み切ったのです(「小売黙示録」については、メルマガ第197号「『トランプの罠』-3月15日、米国小売の黙示録が幕を開ける」にて詳述)。

もっとも、小売黙示録の最大の原因は、長い間、労働者の賃金上昇が抑え込まれてきたことではなく、ネット通販などによって、小売の中間コストがカットされたことによる業態転換のプロセスと見る向きもあります。

米国において、賃金引上げの抑制がこれほど長い間続いた理由は、テクノロジーの急速な進化、オートメーション、グローバリゼーション、労働組合の組織率低下、さらにはパートタイムやフリーランス、非正規労働の増大などによって労働市場の細分化が進んだことが大きいと言えます。

通常は、低コストで調達した資金は、まず株式・不動産などの投資に向かい、これが同時進行で賃金上昇をもたらします。

そして、景気が過熱してくると、金融当局が「好景気を持続させる」という名目によって金利の引き上げを行ったとたんにバブルが崩壊するというパターンを繰り返してきました。

米国の場合、その恩恵を受けたのは一部の富裕層だけで、「99%」の人々はテクノロジーの劇的な進歩によって旧態依然とした労働形態の淘汰の荒波にさらわれていったのです。

Next: 賃金を上げ続けないとバブル崩壊? まもなく米経済が直面する災厄とは

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