公平な相続なんてムリ。だからこそ遺言には「あなたの想い」も残してほしい

本年1月から、税制が改正された相続税。基礎控除の縮小や税率アップにより、課税対象者は拡大すると予想されています。財産をのこす人にとって一番重要なのは、相続する人の幸せのはず。行政書士の山田和美さんは、円満な相続のために節税の方法や遺言書の書き方などを知ることは大切だが、それら具体的なテクニックよりも重要なことがあると言います。

円満な相続のために必要なのは「想い」を伝えること

まずすべきことは“自分の気持ちや人生の棚卸”

相続の対策をしよう!相続について考えよう!そう思ったとき、何からスタートしますか?良い節税の方法について調べる。遺言書の書き方を勉強する。……もちろん、それも良いと思います。もちろんそういったことについて、概要を知っておくことは大切です。

しかし、細かいことや具体的なことは、専門家に相談すれば良いのです。最近は無料相談も増えていますから、そういったものを活用してみても良いでしょう。

それよりも、まずやっていただきたい事。それは、自分の気持ちや人生の棚卸です。どんな人にお世話になってきたのか。どんな想いを抱いてきたのか。嬉しかったのはどんなときか。誰に感謝の想いを伝えたいか。

相続の対策を考えるときに、当たり前なのに、案外見落としてしまいがちなことがあります。それは、遺言書をあけるときや、相続対策の結果を見るときには、自分自身はこの世にいないということです。

たとえば、どんな想いで書いたのかわからない無機質な文書があったとして、書いたご本人がそこにいれば、気持ちを確認することはできます。でも、遺言書は、もう本人には聞けない状況で、読むことになるのです。

自分がいなくなった後の世界を想像するのは、難しいかもしれません。そんなこと想像したくない、という方もいるでしょう。

でも、伝わらなかったことで、もしくは、意図が曲がって伝わってしまったことで、家族がもめてしまったり、わだかまりが残ってしまうことより、何百倍も良いはずです。

その遺言書を見たとき、大切な人はどう思うのか。その相続対策は、のこされるご家族を幸せにする内容なのか。この視点が漏れていると、独りよがりな対策や遺言書になってしまいます。

相続では“誰がどう見ても公平な分け方”は困難

例えば、相続人が長男と次男のふたりだったとして、相続財産をきれいに真っ二つに分ける事は困難です。長男に自宅の土地と家を相続させたとして、預金が、自宅の評価額と同額あるとは限りません。また、いくら価額が同じでも、評価額3,000万円の自宅と、3,000万円の預貯金とでは、現実的な価値は同じではないでしょう。さらに言えば、ずっと介護をしてきた長男と、年に1度顔を出す次男が同じ金額というのは、平等でしょうか。

つまり、相続に関しては、「誰がどう見ても公平な分け方」はないのです。もちろん法律上、子供であれば長男であっても長女であっても次男であっても相続分は平等、という決まりはあります。

しかし、それぞれとの関係性や、財産の性質等が異なる以上、どう分けたとしても誰かは不公平感を感じるものなのです。つまり、金額や財産だけを見て、すんなりと全員が納得することは困難。

ではどうすれば良いかというと、なぜそういう分け方をしたのか。そして、どんな想いでその財産をのこすのか。そういう事を、きちんと伝えることが大切です。

相続人にちゃんと想いが伝わると円満な相続になりやすい

私が見てきた中で円満な相続というのは、やはり相続人さんに、その財産をのこした方の想いが伝わっている、というケースがほとんどです。こういう相続は、相続人さんが、財産を遺してくれた方にとても感謝をされている。

一方で想いが伝わっていない場合には、自分の取り分が少ないとか、不公平だとか、納得がいかないとか、不満とかわだかまりのお話しをされることが多いです。

財産を築いて遺すことも、財産をまもって遺すことも、どちらも簡単なことではないはずです。

金額の多寡にかかわらず、その方が人生を通してのこしたもの。それを渡すときに大切な人たちに、何かしら辛い想いをさせてしまうことなど、想像するだけで、悲しいですよね。

遺言書には、付言といって、自分の想いを書くことができます。どんな想いで遺言を書いたのか。自分に万が一のことがあった際、のこるご家族に何を望むのか。伝えたい、のこしたい想いはなんなのか。ぜひ、書いておいて頂きたいと思います。

また、無理に遺言書のなかに書かなくとも、別で手紙をのこしても良いですし(手紙をのこす際は、遺言書の撤回にならないようにだけ、ご注意ください)、音声や映像でのこす方法もあります。

どのような方法でも良いですが、とにかく、財産と一緒に自分の想いをのこすこと。そして、後にのこす方が、それを見るときを想像してみること。それが、円満な相続の秘訣ではないかと思います。

財産をのこすことや税金を減らすことばかりに気を取られて、このあたりが疎かになっているケースもたくさん見てきました。

想いをきちんと伝えることで、家族が争ってしまう悲しい「争族」がなくなることを、願っています。

こころをつなぐ、相続のハナシ』2015/9/23号より一部抜粋
※太字はマネーボイス編集部による

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