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参院選で消費税さらに先送り?ハシゴを外された日銀を襲う「悪い円安」

アベノミクスの「成長戦略」が効果を発揮するまでの対症療法として、大規模な金融緩和を行い、日本国債を大量保有することになった日銀。しかしここにきて安倍政権と日銀のすれ違いは深まる一方のようです。

証券アナリストの武田甲州氏は、来春の参院選では「消費税の再度先送り」が公約になる可能性があり、そうなれば日銀への信認低下やそれを映した「悪い円安」を招きかねないと懸念しています。

「アベ・クロ」コンビの軋みが招く円安

アベノミクスは一応の成功も、明らかになってきたすれ違い

アベ・クロ(首相官邸=安倍首相と黒田日銀総裁)」はかつて密接な間柄で政策にも齟齬はないと見られていました。

しかし今はすれ違い、軋みが目立つようになりました。それが先々悪い円安を招く潜在的リスクとして高まりつつあります。

日銀はデフレ脱却(物価目標2%)を目指して大規模緩和を実施。ドル円為替は70円台から120円台まで大幅円安進行。デフレは止まり、企業業績は拡大して株価も上昇という好循環を生み出しました。

ドル/円 週足(SBI証券提供)

ドル/円 週足(SBI証券提供)

日経平均株価 週足(SBI証券提供)

日経平均株価 週足(SBI証券提供)

アベノミクスは一応成功といわれる所以です。ただ、しかしながら最近は「アベ・クロ」の方向感が違ってきたように思われます。

「円安不要論」や「携帯料金引き下げ」に垣間見える齟齬

たとえば、日銀の緩和で円安方向に為替が動きましたが「これ以上の円安は不要」というメッセージを首相官邸側から出したとか、安倍首相が「携帯通信料引き下げ」を唐突に指示した、ということがあります。

「携帯通信料引き下げ指示」とは政府が物価上昇を望まない=デフレ容認の意味。携帯通信業者の収益悪化は株安と設備投資減をまねき、個人所得や消費にも悪影響を及ぼしますので大問題。

足元の物価上昇率は直近8月がマイナス0.1%。おそらく9月もマイナス。GDPは4~6月がマイナスで、7~9月期もたぶんマイナス。

物価上昇率のマイナス持続はかつての円高デフレ・株安を連想させますし、GDPの2四半期連続マイナスは国際的に見ても景気後退局面入りとして認識される状況です。

日銀は安倍政権に「ハシゴを外された」のか

もともと日銀の大規模緩和は消費税引き上げまでの対症療法の色合いが強く、そのカンフル剤が効いている間に成長戦略で景気を好転させ、消費税引き上げで財政好転というシナリオがありました。

ところが現状は消費税引き上げ延期、日銀緩和の一本足打法状態です。

このままでは2017年春の消費税引き上げ先送りを参議院選挙公約とする可能性さえあります。日銀はさんざん国債を買わされてハシゴを外されたようなもの。

いまでさえ財政再建の見通しは立たない状況で、日銀はさして安全でもない国債を大量保有しています。

財政再建に赤信号=日銀券信用低下=円安。来年夏に向けて何が起こるのか注意してみていく必要があるでしょう。

【関連】「ケータイ料金値下げ」で夫婦ゲンカ中?安倍首相と黒田日銀総裁

週刊 証券アナリスト武田甲州の株式講座プレミアム』(2015年10月12日号)より一部抜粋
※チャートと太字はMONEY VOICE編集部による

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