日本人のおよそ9割が加入している医療保険。しかしFP事務所「BYSプランニング」代表・釜口博さんは本当にその保険加入は必要なのかと疑問を投げかけます。公的医療保険の有用性や平均入院日数、差額ベッドの利用率といったデータをもとに、医療保険の必要性について解説します。
払っても元が取れない?医療保険の必要性を見直そう
日本人の約9割が加入している医療保険は本当に必要か?
平成25年度の生命保険文化センターの「疾病入院給付金の有無(かんぽ生命含む民保)」によると日本人で、「疾病入院に対して給付金が支払われる保険」に加入している割合は88.1%。なんと、9割近くの方が医療保険に加入している状況です。
また、最近の医療保険では、三大疾病や七大疾病で入院した場合に、入院限度日数が延びたり、無制限に入院給付金が支給されたりする医療保険が人気です。
平均寿命が延び、社会保障に対する不安が高まる中、医療保険に加入しておきたい、「安心」を買っておきたいという気持ちはよく分かります。では、本当に医療保険が必要なのかを、データをもとに検証していきたいと思います。
データで検証。医療保険では元が取れない3つの理由
(1)公的医療保険の充実度
会社員及びその被扶養者が加入している健康保険、自営業の方々が加入している国民健康保険では、窓口で支払う医療費は3割であり、収入に応じた「高額療養費制度」により、自己負担額の上限が定められています。
平均的な収入の方ならば、実際の自己負担額は、月8~9万円ですみます。
(2)平均入院日数
厚生労働省「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、平成25年の一般病床の平均入院日数は、17.2日。最安値の終身医療保険、入院日額1万円、終身払いを平均余命まで支払ったとすると、総支払保険料は約150万円。
手術なしの入院ならば、死ぬまでに9回以上の入院、入院の度に手術を受ける入院ならば、死ぬまでに5回以上の入院をしなければ、元は取れない計算になります。
(3)差額ベッドの利用率
入院をする際に、差額ベッド代を利用する場合もあります。厚生労働省の調べによると、平均で5918円/日であり、個室の平均が7563円/日。
ところが、差額ベッドの利用率は、長浜バイオ大学の永田宏教授調べによると全患者数の4.9%、がんが9.6%、心筋梗塞が9.3%、脳卒中は3%。
差額ベッド代を考慮すれば、医療保険は必要とする方も多いのですが、上記利用率から考えればどうなのでしょうか。
また差額ベッド代の請求について、以下の場合は支払義務はありません(厚生労働省から通知されています)。
- 患者の同意がない場合
- 治療上の必要があって個室に入院した場合
- 病院の管理上の都合で個室に入院した場合
1は、脳の疾患などにより自分で同意書に同意できないケースなどが該当します。
2は、免疫力が落ちていたり重症患者であることで、個室に入院する場合などが該当します。
3は、感染症などにより他の患者に影響を及ぼす可能性があり個室に入院する場合などが該当します。
医療保険に入るよりも掛け金を貯金した方が合理的
保険が必要になるのは、「めったに起きないが、起きてしまうと自分や家族が経済的に困る場合」です。医療保険の給付金額は、もらえたとしても数十万~数百万円。
支払う想定の保険料ぶんをコツコツ貯蓄し、もし入院や手術をした場合は、その貯蓄額を取り崩して使う方が断然合理的です。
もちろん、いつでも引き出し可能な預貯金がない場合は、費用が高額になる可能性があるがんに対する保障をメインに医療保険に加入しておくのも選択肢ですが……。
『生命保険の豆知識と知らないと損するかものお話』2015年10月31日号より一部抜粋
※太字、見出しはMONEY VOICE編集部による
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