fbpx

ロシア機撃墜にも関与?イスラム国を支援するイスラエルの狙い=高島康司

何の見返りか?シリアとトルコの間に横たわる奇妙な事実

このように書くと、あらゆる出来事に裏の動きを読み取る陰謀論のような印象を受けるかもしれない。

トルコが開放していた国境の管理を厳しくし、ヨーロッパに流入するシリア難民をコントロールすることは、難民の流入に苦しむEUにとっては非常に重要なことだ。トルコが難民を受け入れるのだから、それに対する応分の見返りがあってもよいはずだ。だとすれば、これには不自然なところはまったくない。

しかし、シリアとトルコとの関係を調べていくと、奇妙な事実がたくさん出てくる。

今回のEUとの合意でEUが提供する資金支援の額は30億ユーロである。これは、ロシアがトルコに対して経済制裁を実施した場合、トルコが受ける予想被害額とまったく同じであると指摘されている。

また、10月21日、ロシア軍とアメリカ軍は、両軍の偶発的な衝突を回避するための処置を協議し、これに合意した。このときロシアは、空爆を予定している地域と時期をアメリカ軍に渡したが、それはトルコにもそのまま渡った可能性がある。

ということは、撃墜されたSu-24の飛行経路をトルコは十分に知っていた可能性がある。それにもかかわらずトルコがロシアの爆撃機を撃墜したのであれば、トルコ軍の攻撃はロシア軍機がやってくることを予期した行動であると見ることができる。

なぜトルコとシリアとの関係は悪化したのか?

たしかにこれはなぞである。背後にあるこうしたなぞを解くためには、そもそも現在のトルコは、なぜシリアのアサド政権に反対しているのか見る必要がある。

2011年まで親密だったトルコのエルドアン首相とアサド政権

実は、トルコのエルドアン首相とシリアのアサド政権は、2011年まで非常に親密な関係にあった。

現在のバシャール・アサドが父親の後を継いで大統領に就任したのは、2000年である。就任してまもなくアサド大統領は、これまでのイスラエルとアメリカ、及びその同盟国に対する敵対政策を改め、イスラエルとアメリカの2国にはこれまでの関係を継続するものの、同盟国とは平和的な関係を模索する新しい外交政策を採用した。

シリアのこうした外交政策の方針転換に応じたのが、2003年に成立し、イスラム色の強い「公正発展党」のエルドアン政権であった。

もともと社会主義的な傾向が強く、ソビエトやロシアとの関係が強いシリアと、伝統的にアメリカの同盟国であるトルコとの関係はあまりよくなかった。この関係を一気に改善させたのは、アサド政権の外交方針転換であった。一時、エルドアン首相とアサド大統領は家族ぐるみの付き合いをするほど、親密な関係を築いた。

だが、この関係は長くは続かなかった。2011年、「アラブの春」はシリアにも上陸し、民主化要求運動が起こった。当初アサド政権は、民主化に前向きな姿勢を見せていたものの、これをきっかけにイスラム原理主義の集団がシリア国内に侵入する兆候が出てきたため、民主化要求運動を強く弾圧した。

これに強い不快感を露にしたのはエルドアン政権であった。

さらに2012年になると、トルコ国境沿いを飛行していたトルコ軍のファントム戦闘機がシリア軍によって撃墜される事件が発生した。この結果、シリアの再三の関係改善要求にもエルドアン政権は応えず、トルコとシリアの関係は現在のように悪化した。これが一般に報道されている見方である。

しかし、プリンストン大学の講師で調査報道のプロ、ベストセラー作家でもあるウィリアム・エンドゲルは、最新の記事で次のような事実を明らかにした。

Next: EUとトルコ、知られざる「2011年の合意」が発端だった

1 2 3 4 5

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ

[月額864円(税込) 毎週金曜日]
いま私たちは先の見えない世界に生きています。これからどうなるのか、世界の未来を、政治経済のみならず予言やスピリチュアル系など利用可能なあらゆる枠組みを使い見通しを立ててゆきます。ブログ『ヤスの備忘録』で紹介しきれない重要な情報や分析をこのメルマガで配信します。『ヤスの備忘録』とともにお読みください。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー