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2016年は高値波乱も~「7月参院選にらみ無策ではあり得ない安倍政権」=山崎和邦

2. それにもかかわらず「This is Japan銘柄」の受難の年であった

筆者が言う「This is Japan銘柄」とは「日本を代表するような優良企業で、海外に名が売れていて、発行株数も多く取引量も多く、よって海外ファンドも国内年金も必ず組み入れるような銘柄」を言う。代表はトヨタ、日立、東芝、三菱重工などである。

トヨタは年足で4年ぶりに陰線を為す可能性がある。今年1月の大発会の初値は7,565円だから、本稿前半を執筆時点(12月25日週末)の株価から82円高を為さねば4年ぶりの年足陰線を形成する。これは避けられる可能性があるが、他の「This is Japan銘柄」は年足陰線を避けられない。

日立は大発会の初値が901円だから、25日週末株価から231円高を為さねば年足陰線である。

東芝に至っては大発会の初値は516円。25日終値217円。時価総額も09年リーマンショックの傷跡の頃に戻った。全社規模の大々的な粉飾決算で株価は故郷(この大相場の始動点)に戻り、それを通り越して原始の森の中に彷徨いこんで行ってしまった。時価総額も1兆円になってしまった。年初来8%高の日経平均に逆行である。

三菱重工は大発会の初値が666円、25日終値が518円、あと3日で148円上がらねば年足陰線を為す。一時は世界の制空権を震撼せしめた零戦を生み(エンジンは今の富士重工だが)、いまだ史上最大である戦艦を生み、戦後工業技術の発信地となって世界に名を知られた三菱重工である。

東芝は事件性のものだが、事件がなくも今は480円であろう。

このような「This is Japan銘柄」の冴えない動きは、出来高の7割を海外勢が占める東京市場を支えてきた「世界的カネ余り現象」が転機を迎えたことの象徴であると言える。大相場というものは、木を見ず森を見て、大勢に乗りさえすれば「いい線」を行くものであった。だがこれからは、森も見て木も見る選択眼が要る。

3. 「アメリカ衰退論の始まり」の年だった

本当に「アメリカの世紀」は終わったのか?を問う始まりの年になった。「日経平均はNYダウの写真相場だ」と言われはじめて四半世紀以上を経るからには、彼の国の国内外の政治・経済・国際環境など市場に強く影響する要因を無視するわけにはいかない。経済は勿論のこと、政治・社会現象・文化・風土、世に有りて在るもの森羅万象ものみな全て、金融市場に影響しない物は何一つない、ということを筆者は実証的・経験的に承知しているからである。

そこでNYダウの下落率と日経平均株価の下落率の関係を見る。以下の表である。

NYダウ 日経平均(NY下落を予期し先行した年には括弧を附した)
87年8月~87年10月▲36% 87年10月~87年11月▲21%
90年7月~90年10月▲20% (90年1月)~90年10月▲48%
98年7月~98年10月▲22% (96年6月)~98年10月▲43%
00年3月~02年10月▲51% 00年4月~03年4月▲63%
07年10月~09年3月▲58% (07年7月)~09年3月▲61%

上記の通り、NYと東京市場は連動してきた。決してNYの影響力は縮小していない。

アメリカ衰退論の流行現象はオバマ大統領の2期目から始まった。世界の主導権を取るとはどういうことかを考えると、それは軍事だけではない。筆者の結論を先に述べれば「アメリカの世紀」は続くがそれは変容する、ということになる。2009年に、オバマ内閣で国務長官を務めたヒラリー・クリントンが発表したオバマ外交の基本方針は「スマートパワー」であり、それは「ハードパワーとソフトパワーの賢明な組み合わせ」であるとした。こういう「第3のパワー」を考慮に入れれば、安易にアメリカ衰退論に与しない方が聡明であろうということを以て、筆者の考え方の要約に替えたい。

地政学的要因があろうとなかろうと、市場経済を動かす力として需給に勝る要因はない。そこで事実上の要因を挙げれば、世界経済は原油・ドル・金(ゴールド)の上で動いている。この3つを制し得る国はアメリカしかない。アメリカは「軍事という暴力装置」だけでなく「市場」を使って「外交」を遂行する唯一の超大国として存続する。よって、アメリカ衰退論を本気で信ずる者は天に唾する者である、とまで本稿では言いたい。

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