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まやかしのリスクオフ後退~究極の波乱要因となる「中国株暴落」の条件

日欧中央銀行のサプライズで、昨年12月来続いていた「年明けからマーケットが急変するリスク」シナリオは一旦は終了し、新しい前提に立った上で相場見通しの再構築をする必要があります。ここで最大のリスクは中国と言えるでしょう。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)

各国金融政策の見通しと押さえておきたいリスクオン/オフ要因

ハイペースのリスクオフには一旦歯止めも油断は禁物

先週は原油安の落ち着きもあり新興国通貨や世界の株式はこじっかりでしたが、週末の日銀政策決定会合で再度サプライズ的な追加緩和を決定したことで、週末にかけてリスクオフからの巻き戻しが各資産一斉に起きました。

先週の米国株は、原油市況が落ち着いていた事で下げ渋っていたところ、FOMC声明でこのところの金融情勢に関してのハト派的メッセージがなかったので再度調整に入るかと思われましたが、金曜の日銀政策決定会合での追加緩和に救われて+2.48%の大幅上昇になったことで、結局S&P500は週間で+1.75%の上昇になりました。

一方の日本株は中国株が冴えない展開が続いていたので、木曜までは神経質な動き弱含んでいましたが、金曜の日銀政策決定会合でのサプライズで大幅高になったことで、週間でも+3.30%と高い伸びとなりました。

年明け後の日本株の下げが突出して大きかったのは、昨年末の最終週から世界の主要国株価が原油下落や資源安を嫌気する形で下落していたのに掉尾の一振的な無理な買いで上げ続けた反動が大きいことに加え、世界のリスクオフの発信地である中国に隣接していることや、リスクオフ時は円が買われるため企業収益悪化懸念が台頭するためです。

しかし、黒田氏が消極的発言を繰り返していたこともあり追加緩和予想がほとんどない中でのサプライズ緩和になったので、3ヶ月パフォーマンスでは、日本株独歩のディスカウントは一旦解消された形になっています。

1年パフォーマンスではどの国も依然としてマイナスに沈んでおり、先週独歩で上げた日本株も先進国並みのパフォーマンスに留まっています。

基本的に1年パフォーマンスのような長めのパフォーマンスで見ると、日欧のようにマネー増加の裏づけのある地域の株式市場が強く、引き締め傾向にある地域の株式市場が冴えないパフォーマンスになっています。

12月初旬の欧州の追加緩和は失望を招きましたが、先週アナウンスされたように依然として追加緩和期待が残っています。一方の日本は昨年12月に非常に中途半端な追加緩和もどきをしたことで出尽くし感が広がっていことも、このところの独歩安の原因の一つでしたが、2カ月連続の緩和もあり過度なディスカウントから抜けることに成功しました。

しかし、世界の株式市場が恐れている中国が隣にあるという地政学的リスクに加え、企業収益に対する為替感応度が高いのにリスクオフ時は円が独歩で買われるという性質から、緩和サプライズが落ち着き中国安が再燃してリスクオフに転じた場合、日本株は再び独歩で売られ易くなるでしょう。

一方の新興国市場は、年明け後の下げがきつくリーマンショック時以来の下げとなっていましたが、20日のECB理事会後のドラギECB総裁発言で一旦落ち着きを見せています。

ECBの追加緩和発言やロシアやサウジの協調減産の可能性で原油が急反発したことでCRB指数も下げ止まり反発していますが、減産はこれから協議されるだけで、実際はOPECの1月産出量は過去最高レベルであることから、原油市況のトレンドが上昇に変わった可能性は低いと思われます。

基本的に、資源価格は株式と違い実体経済にリンクしているので、一次産品の最大需要国である中国経済が減速している以上、本格的な上げトレンドに転じる可能性は低いでしょう。

そう考えると、新興国株式の反発も一時的で持続性に乏しいと思われます。

とはいうものの、日欧の緩和でこれまでのようなペースでのリスクオフは一旦歯止めがかかった可能性が出てきました。

米国の利上げに伴って世界中にばら蒔かれていたドルが米国に還流することと日欧の緩和が当面ないために、マネーはゼロサムどころかマイナスサムの世界になるところに、日銀のマイナス金利導入とECBの3月追加緩和発言が下げ相場のブレーキ役として登場したのです。

もちろん、突如起きた1月のリスクオフ相場は米国の利上げを恐れてのものではなく、中国株安や経済不安からくるので、日欧マネーが中国への過剰流動性供給に関係ない以上、中国が崩れれば再び世界はリスクオフになる可能性は高いです。

しかし、日欧の緩和政策で、過度なセンチメント悪化は和らぎ、新興国からの資金流出のペースは落ち着くと思われるので、1月のような急ピッチで連続した下げはなくなりました。

今後は、期待と楽観から来るアヤ的な上昇相場と、中国や新興国不安からくるリスクオフが交互にやってくるようなマーケットに変わる可能性が高いです。

日欧中央銀行のサプライズで、昨年12月来書き続けていた「年明けからマーケットが急変するリスク」シナリオは一旦は終了し、新しい前提に立った上で、相場見通しの再構築をする必要があります。

Next: 先週の日米欧中銀の会合を踏まえた「要人発言」が極めて重要に

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