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2016年「アベノミクス官製相場」の仕掛けと対策 問題は7月参院選後=吉田繁治

リフレ策の導入から2年10カ月

当初はクルーグマンが『流動性の罠』で、その後は日銀副総裁になった岩田規久男氏が提唱し、内閣府参与の浜田宏一氏が「世界標準」と言いながら経済理論的な背景を作っていた「マネーを増発することによるリフレ政策」は、目的としていた名目GDPの増加効果を上げていません(あれから2年10か月が経過しました)。

(注)当方は、1929年からの大恐慌をケーススタディしてフリードマンが言った「インフレもデフレも貨幣現象」というのは、グローバルな輸出入と通貨交換が進んだ現代では、誤りだったと考えています

政府と日銀のインフレ目標2%は、逃げ水のように、1年半後あたりに先送りされ続けます。ただしこの金融策で、株価と資産価格(3大都市の不動産)は上がっています。

7.2%上がったマンション価格

全国のマンション価格は平均で4618万円になり、1戸当たりでは前年比で7.2%上がっています。低金利マネーによる資産バブル経済の最末期(1991年)が4488万円でしたから、それよりも3%高いのです。米欧と中国大都市に比べればつつましやかですが、それでも、前回のバブル価格を超えたのです。

(注)一次取得としてマンションを買う世帯の年収(30代から40代前半:約450万円)の、すでに10.3倍です。年収の5倍が妥当ですから、はるかに超えています。この価格は、超低金利ローン(10年固定で0.8%)による「ミニバブル」の価格です。大都市部では年収の20倍も多い中国ほどではないにせよ、金利が上がったとき、将来所得でローンを払える価格ではない

マネーの増発によるリフレ策は、米国と欧州でも、株価と不動産でのミニバブルは生んでも、実体経済の成長と2%のインフレ目標の達成の面では効果を上げていません。

ユーロと米国は、デフレ基調

ユーロ(19カ国)の消費者物価上昇率は、我が国より低いマイナス0.2%です(2月)。もともと2%から3%の物価上昇だった米国でも+1.4%に下がっています(1月)。金融の要因では、住宅価格は上がっても物価は上がりません。原油・資源価格の下落が、原因の50%を占めるでしょう。

しかし長期的、そして構造的には、米国の元財務長官ローレンス・サマーズが言ったように、米国・欧州・日本は「ビクセルの長期停滞(Secular Stagnation)」に陥っていると思えます。

長期停滞とは?

長期停滞は、1人当たり所得が高い先進国(日米欧)で設備投資が減少し、成長率が大きく低下することです。その国の経済が長期停滞にあるときは、金融緩和でマネーを増やし、ゼロあるいはマイナス金利にしても、企業はそれを借りて設備投資を増やすことはしない。

理由は、将来GDPの低い成長、またはゼロ成長が想定されるときは、借入金による設備投資の予想ROI(Return On Investment:予想利益/投資額)が確保できないからです。

このため、減ってきた設備投資の増加がなく、経済(GDP)は成長しなくなります。需要(消費と設備投資)が増えず、デマンドプル型での物価上昇はない。デマンドプル型での2%から4%の物価上昇は好ましい物価上昇です。

株価と不動産のみが上がっている理由

金融の超緩和やゼロ金利により、資産(株価と不動産)だけが、つかの間の上昇を示しています。これは過剰流動性の相場です。

上がった資産価格は、金利が上がる時期になると、実体経済(GDP=所得)に合わせて再びしぼみます。

ゼロ金利やマイナス金利の効果は、GDPの実体経済には及ばない。株価の上昇はGDPには入りません。
(注)日本とユーロ(特にドイツ・イタリア・スイス)の自然成長率の低下は、ほぼ似た人口構造問題によるものでしょう

日経平均の問題から、思わず、原因である「長期停滞:Secular Stagnation」にまで話が進んでしまいましたが、自然成長率(潜在性成長力ともいう)低下傾向については、別に論を準備すべきでしょう。とても重要なことです。

Next: 再びの政府主導による官製相場~「外国人投資家の買い」との見分け方

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