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地方銀行は「運用業界のショーンK」ではなくシーラカンスを探せ!=近藤駿介

地方銀行が共同で資産運用会社を設立するとの報道。だがこの四半世紀の間ベンチマーク運用に励んできた日本では「安定収益」をあげる能力を持った専門家は極めて少ない。(『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

ベンチマーク運用の限界と、「運用業界のショーンK」とは?

地銀7行で運用会社

山口フィナンシャルグループ(FG)や西日本シティ銀行など地方銀行7グループが共同で資産運用会社を設立する。自己資金を持ち寄ることで運用規模を拡大し、投資対象を広げる。日銀のマイナス金利政策で地銀の経営環境が厳しさを増すなか、安定的な収益確保へ投資をてこ入れする。

出典:地銀7行で運用会社 – 日本経済新聞(2016年3月18日)

マイナス金利を避けて安定的な収益を確保するということは、ベンチマーク運用花盛りの今日、プラスのリターンを追及するということ。

「メガバンクや外資系金融機関出身のファンドマネージャーなども迎え、地銀には乏しかった専門人材が運用を担う体制にする」(同日本経済新聞)

90年のバブル崩壊以降、販売会社が持ち出した「グローバルスタンダード」という空虚で耳触りのいい言葉を振りかざして、日本はベンチマーク運用に突き進んで行った。「グローバルスタンダード」というくらいだから、外資系の運用もほとんどがベンチマーク運用。

「グローバルスタンダード」を盲目的に受入れた結果、日本では「貯蓄から投資へ」は実現せず、年金制度は破綻に向かっていった

こうした現実が示しているのは、「グローバルスタンダード」であるベンチマーク運用では、相場が都合のいい方向に動かない限り「安定的な収益」をあげることはできないということだ。

「安定収益」をあげる専門家はシーラカンス的な存在

この四半世紀の間ベンチマーク運用に励んできた日本では、「安定収益」をあげることを目的に運用し、研鑽を重ねてきた専門家は極めて少なく、いたとしてもシーラカンスのような存在といえる。

仮にシーラカンスのようなファンドマネージャーが存在していたとすると、マイナス金利下で彼らの市場価値は極めて高くなる。だとすると、メガバンクや外資系金融機関が手放すはずはないし、本人も保守的な地銀の給与体系へ転じる可能性は低い。

その結果、「メガバンク出身」「外資系金融機関出身」という立派な肩書を持った「運用業界のショーンK」ばかりを集めるリスクがあることを、地銀7行はどれだけ考えているのだろうか。

「空を飛べる人間を集める」かのような話をしている時点で、この運用会社の将来はおおよそ想像が付くような気がしてならない。

【関連】元ファンドマネージャー目線で見た、映画『マネー・ショート』の感想=近藤駿介

近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2016年3月18日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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