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基礎体力に不安、回復の力強さに欠ける日経平均~「理論株価」最新分析=日暮昭

年初から不安定な動きが続く株式相場がここに来て一服模様です。これから一段の回復に進むのか、再度下落に向かうのか、あるいは安定局面に入るのか、微妙な段階に差し掛かっているようです。今回は前月に続いて理論株価をベースとした日経平均の変動範囲を使って、足元の相場の位置づけを見てみましょう。(『投資の視点』日暮昭)

筆者プロフィール:日暮昭(ひぐらしあきら)
日本経済新聞社でデータベースに基づく証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。統計を用いた客観的な投資判断のための市場・銘柄分析を得意とする。

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理論株価1万7560円に向かって反発も、力強さは欠ける展開に

理論株価をはさんでブレ幅が広がる日経平均

下図は昨年の5月末から直近の3月18日までの日経平均と理論株価の推移を示すグラフです。5月は前期の決算発表と合わせて発表される当期の業績予想が理論株価に折り込まれることで、当年度中(現在では2016年3月まで)の相場評価で本来の姿を手に入れることになります。

日経平均と理論株価の推移(日次終値)―2015.5.29~2016.3.18―

日経平均と理論株価の推移(日次終値)―2015.5.29~2016.3.18―

日経平均が青色、理論株価が赤色の線です。日経平均は2015年8月半ばまでは理論株価を安定的に上回っていましたが、中国ショックによる急落で8月末には理論株価を一気に下回りました。

後でみるようにこれは変動の下限を突破したもので、悲観が行き過ぎたことを示しています。日経平均は直後に反発し10月に理論株価まで戻しましたが、12月に入り米国の金利引き上げ、中国経済の減速本格化懸念などから下落に転じ、年を越してからはさらに下げが加速し、日経平均は1月と2月に急落しました。しかし直後に大きく反発するなどブレが大きくなっているのが目立ちます。

経験則にしたがって反発する相場

こうした動きを日経平均の変動範囲の視点から見たのが下のグラフです。対象期間は上と同じ昨年5月末から直近の3月18日です。

日経平均と通常の変動範囲、変動の限界(日次終値)―2015.5.29~2016.3.18―

日経平均と通常の変動範囲、変動の限界(日次終値)―2015.5.29~2016.3.18―

日経平均は紺色の線、緑色は日経平均の通常の変動の範囲を、そして赤色の線はそこから外れると反転する可能性が強まる限界線を示しています。

図から、日経平均は昨年の9月29日、そして今年に入ってから2月21日と3月12日の3回赤線の下限を超え、いずれもその直後に反転しています。これまでの経験則がここでも成り立った形となっています。

足元の3月18日を見ると日経平均が1万6724円に対して通常変動の下側は1万6543円で、日経平均は通常変動の域内に戻っています。3月に入ってから緑色の通常変動の範囲内で推移しており、当面落ち着いたように見えます。

変動範囲はかい離の傾向を統計的に整理して決める

さて、こうした日経平均の変動範囲を決めるカギは日経平均と理論株価のかい離です。両者のこれまでのかい離のパターンを統計的に整理して、平均的なかい離の範囲内であれば通常の変動範囲とし、平均的なかい離の2倍の規模で変動した場合を変動の限界としています。ここでは、こうしたかい離の傾向を捉える期間を2014年の初めから直近までとしています。

下図はこのかい離の推移を示したグラフです。

かい離率の推移{日次終値ベース}―2015.1.5~2016.3.18―

かい離率の推移{日次終値ベース}―2015.1.5~2016.3.18―

青色の線が日経平均と理論株価とのかい離率、中央の黒い線がこの間のかい離率の平均、平均をはさんだ上下にある緑色の線が平均的な変動幅である通常変動の範囲、赤色の線がその2倍の幅で変動の限界を示します。

この間のかい離率の平均はマイナス0.87%で、日経平均はここ2年強の間では理論株価を1%弱下回っています。この事実を踏まえて、変動幅は平均値を基準として算定します。

通常変動の下側はマイナス5.80%の位置、変動の下限は10.73%の位置となります。これを日経平均ベースに引き直したのが上の図にある、通常変動の下側の1万6543円であり、変動の下限である1万5525円というわけです。

直近の3月18日のかい離率はマイナス4.77%で通常変動の下側のやや上の位置となっています。

Next: 回復の力強さの裏付けとなる体力は?理論株価が下がり続けている

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