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タカタ<7312> 上場廃止はなくても株価が上がらない理由=栫井駿介

エアバッグのリコール問題でタカタの経営が揺れています。一部報道ではリコール費用の総額が2兆円に上るとも言われ、株価は1年前の約3分の1まで下落しています。果たしてタカタへの投資を検討できる状況なのでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

巨額リコールに苦しむタカタをホンダはきっと救済する。しかし――

リコール費用2兆円の試算も

タカタはエアバッグやシートベルトを製造し、自動車メーカーに納入しています。問題となっているのは同社が作るエアバッグの不良により死亡事故が発生した事案で、世界で11人が死亡したとされています。死亡事故のほとんどが米国でのものです。

事故の厳密な原因は調査中となっていますが、結論に先立ち自動車各社はリコールを行っています。現在リコールの対象となっているのは約5,000万台で、最終的に1億台に上るとも言われています。1台の修理にかかる費用が1~数万円ということなので、負担総額2兆円と言われている数字と合致します。

リコール費用を全てタカタが負担するというわけではありません。自動車メーカーとの協議の上、負担割合が決定されます。それでもタカタの純資産は約1,400億円しかなく、リコール費用の額から考えて債務超過は免れそうにありません。債務超過になると、何も手を打たなければ上場廃止になってしまいます。

業界でのプレゼンスは高い

タカタは1933年創業の伝統ある企業です。エアバッグの他にシートベルトやチャイルドシートなど、自動車の安全に関わる部品を製造しています。株式は約6割が創業家によって保有される、典型的な同族経営です。

主な納入先はホンダ、フォルクスワーゲン、GM、ルノー日産、フィアット・クライスラーなどであり、日本企業にとどまらないグローバルな展開を行っています。なかでもホンダとの関係は深く、今回の件の鍵を握っていると考えられます。

エアバッグやシートベルトはいずれも世界シェア20%程度と2~3番手に付けています。今回のリコール台数が1億台に上るというのも、それだけ自動車業界での高いプレゼンスがあるということの裏付けです。自動車に安全装置は欠かせないものなので、需要も安定しています。

Next: ホンダはタカタをきっと救済する。それでも株価上昇が望めない理由

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