調査会の会長である川崎二郎はテレ朝とNHKの幹部を呼びつける前に、BPOについて、こう語っていた。
「(報道ステーションで)名誉を傷つけられた菅義偉官房長官がBPOに訴えることになれば、それは正規の方法だ。BPOが『お手盛り』と言われるなら、少し変えなければいけないという思いはある。テレビ局がお金を出し合っている機関ではチェックができないならば、独立した機関の方がいい」
NHKと民放がつくった第三者機関であるBPOに対し、あらかじめ脅しをかけるような発言だ。ここまで言っておけば、まさかBPOが自分たちに歯向かうようなことはするまいと高をくくっていたかもしれない。
しかしBPOの現メンバーは、彼らが思うほど腰抜けではなかった。委員長代行の是枝裕和(映画監督)や、香山リカ(精神科医)、斎藤貴男(ジャーナリスト)ら10人は、権力の統制に対する反骨心を、意見書にこめた。テレビ局側に立つというのではなく、あくまで市民目線で、権力サイドの高圧的な姿勢に警鐘を打ち鳴らしたのだ。
おそらく、彼らの意見書に対して、自民党は報復を仕掛けてくるだろう。
「BPOが『お手盛り』と言われるなら、少し変えなければいけないという思いはある」と語った川崎二郎の恫喝は、BPOの委員入れ替えなどの圧力として顕在化してくるかもしれない。だが、BPOの現メンバーは、それを覚悟のうえで、国民のために、言論の自由のために必要なことをしたのだ。われわれ国民は今後の自民党の出方を注視する必要がある。
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『国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋
著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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