【書評】天才はある種の病気。そう確信させる異能起業家の半生記

 

さっそく、そのエッセンスを見て行きましょう。

やがてマスクは「夜眠れないほどの大きな心配事がある」と打ち明けた。グーグル創業者のひとりでCEOのラリー・ペイジが、人工知能ロボット軍団を率いて人類を滅亡に追いやるのではないかという不安だった

誰にも真似ができないほど壮大な夢を追う天才だ。蓄財に現を抜かすCEOとは一線を画する

「そもそも週にどのくらい時間を作ったら女性は喜ぶだろうか。10時間くらい? それだと最低限かな。わからないな」

最初の妻ジャスティンの言葉を借りればこうだ。「やると決めたら実行する人で、簡単には諦めない。それがイーロン・マスクの世界であって、その世界に暮らすのが私たちなの」

少年が宇宙、そして善と悪の戦いに空想を巡らすのは、よくある話だ。だが、その空想の世界を真に受けている少年がいたとしたら、いささか気になる。イーロン・マスクはそんな少年だった。10代半ばまで、マスクは空想と現実を区別できないほどに頭の中で混在させていたようだ。この宇宙における人類の運命を、まるで自分の責任のように受け止めていたのだ

少年時代のマスクの性格の中でも印象的なのが、異常とも言える読書欲だ。小さいころからいつも片手に本を持っていた

「あの子は、まず自分の目指すものがあって、そのためには何を勉強すべきかというふうに考えるんです。だからアフリカーンス語のような必修科目があっても、なぜ学ぶのか、いまひとつ理解できなかったんです」(母のメイ)

「インターネット」「宇宙」「再生可能エネルギー」の3つの分野こそ、今後、大きな変化を遂げる分野であり、自分が影響力を発揮できる市場だと見ていたのだ

マスク、ペイジ、そしてグーグルの弁護士が買収の詳細を詰めているときにまたしても奇跡が起こった。マスクが無理やり営業に変えた500人の「営業部隊」が大量の契約を獲得し始めたのだ

苦悩はマスクの人生そのものである。学校ではいじめに苦しんだ。厳しい父親からは相当辛い思いをさせられた。やがて社会に出てなりふり構わずに働き、自分を限界まで追い込み続けた。もはやワークライフバランスという言葉自体が無意味なのだ。実際、マスクにとってはワークかライフか、などという分け方はありえない。すべてひっくるめて「ライフ」なのである

世界が今、最も注目している起業家、イーロン・マスクが、どんな思想を持ち、どう行動しているのか、その詳細を知ることができる、じつに貴重な1冊。彼の異常さを生んだ家庭環境や、付き合った妻たちの証言など、プライベート面がのぞけるのも本書ならではの特長だと思います。

ぜひ読んでみてください。

image by: Shutterstock

 

『毎日3分読書革命!土井英司のビジネスブックマラソン』
著者はAmazon.co.jp立ち上げに参画した元バイヤー。現在でも、多数のメディアで連載を抱える土井英司が、旬のビジネス書の儲かる「読みどころ」をピンポイント紹介する無料メルマガ。毎日発行。
<<登録はこちら!>>

print
いま読まれてます

  • 【書評】天才はある種の病気。そう確信させる異能起業家の半生記
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け