タバコは肺がんと関係ない?喫煙率とがん死亡率“反比例”のワケ

2015.11.26
by Mocosuku
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「タバコを吸おうと吸うまいと、肺がんに関しては大差ない」

『バカの壁』の大ベストセラーを持つ解剖学者・養老孟司さんの喫煙についての発言が話題となっています。上記は、週刊朝日における林真理子さんとの対談で飛び出した言葉ですが、養老さんはこれまで解剖した人の肺は「みんな真っ黒だった」とも語っています。多くの人が持つ「タバコを吸うと肺が真っ黒になる」というイメージからすると、これも衝撃的な発言ですね。養老さんの言葉によれば、肺が黒くなるのは「消化できないゴミが入って、細胞が食ってためてるから」とのこと。現在78歳の愛煙家・養老孟司さんがお元気で活動を続けているところを見ると、タバコと肺がんには本当に関係がないのでしょうか?

喫煙率は下がっているのに、肺がんは増加?

日本たばこ産業(JT)による「全国たばこ喫煙者率調査」によると、2014年の時点における成人男性の平均喫煙率は30.3%。1965年以降でピークとされる1966年の男性の平均喫煙率が83.7%ですから、少なくとも男性の喫煙者はこの50年ほどの間に半分以下に減少していることになります(女性の平均喫煙率も近年はゆるやかに減少)。

一方、厚生労働省が2007年に発表した「人口動態統計」を見てみると、がん死亡者数にみる肺がん(気管、気管支のがんを含む)による死亡者の数は、1950年から2007年までずっと増加を続けており、1999年にはそれまで死亡者数がもっとも多かった胃がんを抜いてトップに。最新の2014年発表の「人口動態統計」でも2013年の死亡数は、依然肺がんがトップのままです。こうした統計を見ると、たしかに「タバコ=肺がん」と決めつけるのは難しくなりそうですね。

高齢化社会を考慮した統計も

しかし、この「喫煙者は減っているのに、がん患者は増えている」という理論に異を唱える声もネット上などでは多くあがっています。おもな反対意見は、こうした資料が、社会全体の高齢化や、喫煙年数を考慮に入れていないというもの。たしかに、高齢者の数が増えるほど、がん患者の数は増加しますし、タバコも一度吸ったからといってすぐに健康を害するものではありません。喫煙が健康に深刻な影響を与えるとすれば、それは長年の習慣による部分が大きいと考えられます。

ちなみに、がんによる死亡率が本当の意味で増加しているのかを調べたものとして「年齢調整死亡率」があります。これは、がんの死亡率から、高齢化など、社会における年齢構成の変化を取り除いたものですが、年齢調整率で見ると、がんによる死亡は1990年代半ばをピークに減少しているとのことです(ただし、がん患者は年齢調整率で見ても1980年代以降増加している)。

喫煙とストレス

喫煙が健康に影響を及ぼすかという点については、タバコを吸う人の体質や環境、吸う本数なども関係してくるため、一概にタバコが良い・悪いと言い切るのは難しいといえます。たとえば、肺や気管が強くない人は喫煙年数が短くても健康を害する可能性がありますし、養老さんのように長年タバコを吸っていても元気な高齢者もいます。

また、お酒やタバコについては「我慢することがストレスになる」という意見をよく聞きますが、これも本人の体質や、喫煙・飲酒の程度によって変わってきます。たしかに、好きな物を我慢するストレスが体に悪影響を与える面もあるかもしれませんが、かといって過度な喫煙や飲酒を続けていると、ストレスを上回る悪影響を健康に与えてしまう可能性もあります。

こうしたことを考えていくと、結局は本人にしか喫煙の善し悪しは決められないということになってしまいます。だからこそ、喫煙や飲酒については、「自分の体からのサインに注意する」ことが大切なのです。体の不調に対して見て見ぬふりをせず、喫煙などの生活習慣をいつでも改善するという心がまえが、健康の維持には不可欠といえるでしょう。

また、タバコについていうと、喫煙マナーやまわりの人が煙を吸いこんでしまう「受動喫煙」の問題は大きいといえます。喫煙者はタバコを吸う際に、自分のまわりに、子どもや未成年、妊婦さんなど「タバコの煙による健康被害を受けやすい人たち」がいるということを忘れないようにしたいものですね。

<参考>
タバコは肺がんリスクなし?養老孟司が禁煙しない理由 週刊朝日

成人喫煙率 厚生労働省

がん対策等 厚生労働省

年次推移 がん年齢調整死亡率 がん情報サービス

 

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