AIIBは公式サイトでさえやっつけ仕事。今は静観するのが上策

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中国投資銀(AIIB)への参加を見送った日米に対して、国内外から「世界から孤立した」「新しい経済の波に乗り遅れた」といったマイナスのコメントが向けられています。しかし、アメリカ在住の作家・ジャーナリストの冷泉彰彦さんは「今は静観するのが上策」とした上で、AIIBのHPから漂う「不穏な空気」を指摘しています。

AIIB、当面は静観が上策

中国が主導する「アジア・インフラ・開発銀行(AIIB)」に関しては、日本とアメリカは、その創設メンバーには入りませんでした。一方で欧州各国は出資することとなったわけで、日米が孤立したように見えるとか、中国主導の経済に乗り遅れていいのかといった議論が、創設メンバー入りを見送った後でも、色々と騒がれているようです。

私は、このAIIBに関しては、現時点では「静観」で良いと思います。

というのは、恐らくは理念という意味でも、実務という意味でも、このAIIBという金融機関の立ち上げは全くの準備段階で「海のものとも山のものとも分からない」からです。

まず、このAIIBですが、とりあずインターネットのホームページはできています。ですが、内容は全く薄いのが現状です。これからドルベースでビリオン(日本円で1千億円の桁)とか更にその100倍、あるいはそれ以上、といったカネを動かす機関としてPRの体裁はできていません。例えば、このホームページの中にはQ&Aのコーナーがあるのですが、例えば当メルマガのようなディスカッション形式のものは勿論ありません。

例えば設立の経緯としては習近平主席李克強首相が東南アジアを訪問した際に着想されたとか、銀行の運営はこれから決められる理念や内規によって行われるといった、全く毒にも薬にもならない、「無内容な言葉」が並んでいるのです。

全く無内容というと、やや言いすぎかもしれません。例えば理念としては「リーン(引き締まった)、クリーン(清潔な)、グリーン(環境に優しい)」というスローガンが掲げてあります。

ですが、これが何とも心配な感じを与えます。大規模な金融機関として官僚組織の肥大化を避けるとか、恣意的な審査や融資といった腐敗を避ける、また融資先のプロジェクトに関して乱開発とか環境破壊を避けるというのは、話としては良い話です。

ですが、それをスローガンとして掲げるという姿勢には、何とも心配な感じがするのです。周囲から「肥大化、腐敗、環境破壊」といった懸念があることに対して、まるで弁解のように見えるからです。

勿論、これは「やっつけ仕事」で作ったホームページであり、あんまり真に受けて論評するのは酷なのかもしれません。まだまだ閉鎖的な中国社会の状況を考えると、規模の小さいものであっても、英語のホームページがあるだけ「まし」なのかもしれません。

ですが、この内容で「全世界に発信する」ことが企業の意志決定として決裁されるということ自体を考えると、「どうにも心配だ」という印象につながるのは、否定出来ないのです。

『冷泉彰彦のプリンストン通信』第60号より一部抜粋

【第60号の目次】
1.巻頭言 クリスティ知事の奇策
2.メイン・コンテンツ「プリンストン通信」(第60回) AIIB、当面は静観が上策
3.連載コラム「フラッシュバック70」(第42回)
4.Q&Aコーナー

著者/冷泉彰彦(作家)
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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image by:AIIB

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