世界に再び吹き荒れるナショナリズム。斜陽の米国はどこへ行く?

 

その他の重要問題について

以上、落ち目の覇権国家アメリカがつくりだす世界情勢について触れました。

後2つ、皆さんがおそらく関心をもっているであろうテーマについて簡単に触れます。

 ・アメリカ経済は?

長期的には、ユーロや人民元の台頭により、ドル基軸通貨体制が徐々に破壊されている。これは、非常に大きな問題で、アメリカ衰退の根本原因になっています。

一方、FRBは昨年12月、9年ぶりの利上げを決断しました。つまり、短期的に、「アメリカ経済は正常な状態に戻りつつある」と宣言した。どういうことかというと、2016年「アメリカ発の大きな危機が起こる可能性」は、あまりないということです。

むしろ、経済がらみでは、「中国経済はどうなるのか?」に関心が集中すると思います(中国発の経済的事件が起こり、それがアメリカや世界に波及するシナリオはあり得ます)。

 ・アメリカ、新大統領は?

2016年、アメリカは選挙の年ですね。そのせいで、オバマさんの影は、ますます薄くなりそうです。

アメリカ大統領選がらみで、一番注目されるのは、「トランプは大統領になれるのだろうか?」でしょう。そんなことは、もちろんわかりません。しかし、彼が「世界とアメリカのトレンドに合致している」ことは間違いありません。

「世界のトレンド」とはなんでしょうか? 善悪はともかく「ナショナリズムが流行している」こと。世界的に「ナショナリスト」というと、プーチン安倍さんですね。

しかし、「ナショナリズム」は「世界的潮流」になりつつあります。たとえば、ISによる「同時多発テロ」が起こったフランス。いま一番人気の政治家は、「極右政党」とよばれた「国民戦線」のマリーヌ・ル・ペンさんです。

大暴れするIS、多発するテロ、欧州に大挙してくる難民(イスラム教徒)が、欧米で「ナショナリズム流行」の原因になっている。

トランプは、(移民を制限するために)「メキシコとの国境に『万里の長城』をつくる!」と宣言している。また、「イスラム教徒の入国を禁止すべきだ!」と宣言している。こういう過激な発言が、テロに怯えるアメリカ国民の心情にマッチし、人気を獲得している。

もう1つ、「アメリカのトレンド」とはなんでしょうか? 「ロシアと和解して中国と戦う」ということです。トランプは常々、「プーチンとの和解」を主張する一方で、中国を非難しています。さらに、「中東への関与を減らすべき」と主張している。要するに、「アメリカの進むべき方向性」について、過激な口調ながらも、正しい視点を持っている。

もちろん、どうなるかわかりませんが、トランプが大統領になっても、私は驚かないでしょう。

長くなりましたので、今日はこの辺で! 次号からは、「他の大国群」「日本」の「2016年」について考えます。

image by: Christopher Halloran / Shutterstock.com

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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