なぜ首都圏の電車はこうも雪に弱いのか?在米作家がメカニズムを解説

 

さて、ポイントに「融雪・消雪などの不転換対策」が100%装備できないとしたら、どうするか? それは、車両をとにかく運行することです。車両が一定の頻度と速度で運行されていれば、ポイントに雪が溜まって凍結することは避けられるからです。

今回、大きな問題になった「間引き運転の原因はここにあります。首都圏の鉄道では、雨が降ると遅れるという現象が悩みの種となっています。雨が降ると、徒歩や自転車、あるいは自動車の流動が鉄道にシフトするということもありますが、濡れた傘を持って「晴れた日のように満員電車に身体を押し込む」のは遠慮されるために、混雑時の乗車にはプラスアルファの時間がかかる、それが積もり積もって遅延の原因になるのです。

降雪時には同じことが、より深刻な形で起こります。仮に遅延があるレベルを超えると、駅間での停車ということが増えます。そして、その際に降雪のペースが強くなると、「渋滞で電車が来ない時間帯にポイントに雪が溜まって凍結するということも起きます。

こうしたトラブルを避けるために、今回は各線ともに大幅な間引き運転を行ったわけです。その結果として、各駅で大幅な積み残しが出る、そして鉄道事業者としては「ホームから人があふれる」ということは最大のタブーですから、駅構内の入場制限ということになったわけです。

本来でしたら、事前に「相当程度の輸送力の低下」が見越せていれば、首都圏では広範囲で職場における「不要不急の通勤の抑制」や、学校の「休校判断の早期決定」などによって、エリア全体の流動を削減することが必要でした。

そのような要請を鉄道事業者が行って、それを官民が協力するようなことは、やろうと思えば出来るはずです。告知方法としては、実際にネットによるコミュニケーションのインフラがあるのですから、これは社会的な課題として今後へ向けて議論が必要と思います。

image by: Shutterstock.com

 

冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋

著者/冷泉彰彦
東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは毎月第1~第4火曜日配信。
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