メイド・イン・ジャパンの「戦車」は薄すぎて使いものにならない

 

中途半端な防弾力の装甲車の導入反対意見を出していたメーカー技術者会議については、本メルマガ2015年7月21日発行号(市街戦会議)で記した。

米国製でさえ…、と考えれば、日本製の装甲車の装甲板が、どれほど頼りないかは、想像つくのではないだろうか。しかも、日本が硬い鉄の製造をできないということは、同じ厚さの装甲板を装着していたとしても、日本の装甲は欧米ロシアのものより簡単に破壊されてしまうということ。

1990年代、防衛庁将官クラスは「ソ連脅威論に対抗して急造で自衛隊を作った今までは、見せることでソ連に日本侵攻の意志を持たせないための、見せる軍隊だった。これからは、対ゲリコマ戦など考えると、使える軍隊にしてゆかなければならない」と言っていた。

日本の戦車の装甲板は、61式戦車74戦車に関しては「見せる装甲」でしかなかったことが、射撃実験などで自衛隊員たちにも知られてしまっている。「61戦車に、105ミリ砲弾を命中させると、戦車の砲塔は粉々に吹き飛んだ。あれじゃ、戦車の意味ないよ、と感じた」と陸自の2尉が言っていた。また、機関銃弾で74式戦車に穴があいた弾痕を見てしまった隊員もいた。当時は「戦車の装甲は砲弾をはね返す」という前提で戦車部隊の運用がなされていたため、それらの事実は、隊員の士気にもかかわるということで伏せられていたが、もう21世紀だし、いいだろう。

90式戦車以降、10式戦車とか、ちゃんと弾き返せる装甲になっているのかどうかは、カトケンも話を聞けていない(まあ、話だけ聞いても即信用ってわけにいかないが)。いきなり、日本が硬い装甲を作れるようになっているとは考えづらいが、もし、弾き返せる装甲になっているのなら、その装甲を優先的に装着するのは、戦車ではなく、兵員輸送装甲戦闘車両になるはずだ。戦車の搭載兵器を守ることより、装甲車内の歩兵を守ることの方が戦術上大切な時代であることは、シリア戦争市街戦のユーチューブを見ればはっきりしている。市街地歩兵でなければ制圧できないから、歩兵を大事にしないと。日本国内で地上戦が行われるとしたら市街戦だよね。

歩兵戦闘車が主役であることを解説するシリア市街戦部隊のページはコチラ

そうそう、前の方で記した「硬い鉄に関しては日本はイタリアより弱い」について。日本のイージス護衛艦の速射砲の砲身イタリア製、米陸軍の正式拳銃イタリア製。つまり、銃砲身という硬さが大事なモノイタリア製なのだ。工業において、イタリアより日本が弱いものがあるなんて、愛国者にとってはショックかも。

だが、前述のタービン設計者は、淡々と言う。「ヨーロッパの国は、タングステンなど鉄を硬くするレアメタルのある地域を古くから植民地にしていて、研究とノウハウが数百年前から進んでます。日本には、残念ながら、基礎のスタートからのノウハウがない、日本にあるのは精密で複雑な加工技術」。

また、スウェーデンやロシアに詳しい商社マンさんは「硬い鉄というのは、製造してから20年以上とか放置して寝かしておいてできるもの。日本の産業界には、そういう長期視点な価値観が欠けてるかも」と。とはいえ、安心せよ、愛国者たち。中国製の銃身もかなりヤバいらしいから。同じカラシニフ小銃でも、中国製は、射撃を控えながら使わないと、銃身の熱変形による事故があるので…、これは、カラシニコフのある戦場経験者の基礎知識。

image by: YMZK-Photo / Shutterstock.com

 

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著者/加藤健二郎
建設技術者→軍事戦争→バグパイプ奏者、と転身してきてる加藤健二郎の多種多様人脈から飛び出すトーク内容は、発想の転換や新案の役に立てるか。
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