日本ならでは? 「karoshi(過労死)」をなくすには

2016.02.08
by Mocosuku
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過重労働の実態 を明らかにすることはやはり難しいことなのでしょうか。

英会話学校の講師をしていた女性(当時22歳)が2011年に自殺した原因は長時間におよぶ持ち帰り残業だったとして、2014年5月に金沢労働基準監督署が労災認定をしていたことが2014年11月6日に判明しました。

持ち帰り残業が1ケ月82時間にもおよんだとされ、英会話学校での残業と合わせると1か月で残業時間が111時間を超えたことが決め手となったようです。

厚生労働省が公表している「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、精神障害の労災請求件数は、2013年1409件に上り、2007年以降、脳・心臓疾患の労災請求件数を超えて増加の一途をたどっています。

過重労働の実態 :過労死の労災認定基準

過重労働によりうつ病などの精神障害を発症し、その結果自殺にいたった場合も労災として認定されるようになったのは、1999年以降で、現在は2011年12月に新たに定められた「心理的負荷による精神障害の認定基準」によって労災認定か否かが判断されるようになっています。

認定要件は、

(1) 認定基準の対象となる精神障害を発病していること、

(2) 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること、

(3) 業務以外の心理的負荷や固定側要因により発病したとは認められないこと、

の3つです。

英会話学校の女性講師のケースは、長時間労働に従事したことが精神障害発病の原因であり、その結果自殺に至ったということが、労災認定条件を満たしたことになるわけです。

統計データでは見えない 過重労働の実態

過労死の労災認定基準を大きくまとめると、月80時間以上の残業があるかどうかが過労死の基準で、残業を含む週の労働時間に換算すると60時間以上となります。

総務省の平成25年度「労働力調査」によると、週間就業時間が60時間以上の従業者数は479万人と大変大きな数となっていますが、実際には更にもっと多くの数値になると思われます。

というのも、被雇用者への調査は認識や記憶があいまいであるケースが多く、雇用者への調査では、賃金を支払った時間のみが回答されるため、いわゆるサービス残業の実態は正確に把握できない為です。

また、厚生労働省が公表している「労働時間等総合実態調査」では、時間外労働に対する割増賃金の有無や割増賃金率、代替休暇制度の有無は把握できても、実際に行使されているかどうかの実態は見えてこないのが現状です。

過重労働の実態 :迷走する対策 過労死対策法と労働時間規制緩和

2014年6月には「過労死等防止対策推進法」いわゆる「過労死防止法」が公布されました。

この法律は、国民への啓発と、国・自治体が実施する対策への事業主の協力を求めるもので、未然に過労死を防ぐことへの効果には疑問符がつきます。

また、現在、労働時間の規制緩和の議論が続いています。

これは労働基準法で定められた原則1日8時間、週40時間という時間規制を廃止し、働いた時間に関係なく、成果に対して賃金が支払われる仕組みであるホワイトカラー・エグゼンプションを導入するというものです。

現在のところ、この労働時間規制緩和は年収1000万円以上の高度な専門職に限るとされていますが、労働組合や労災問題に取り組んできた弁護士などから、過労死や過労自殺を促進するだけではないのかという声もあがっています。

過重労働の実態 :制度と「働くこと」に対する意識を変える働きかけが大切

「過労死」は、「karoshi」とそのままアルファベット化されてオックスフォード辞書に掲載されているように、英語では該当する言葉が存在しません。

このように、日本社会特有の問題とも言える、「過労死」の問題ですが、解決策はあるのでしょうか?

一つは、制度上の取り組みが考えられます。

長時間労働削減に向けて公的機関が企業を監視、あるいは企業側が産業カウンセラーを雇うなど、第三者がチェックを行い、解雇などのプレッシャーにより、本人が声をあげにくい状況を改善する事が必要です。

もう一つは、人々の意識に対する働きかけです。

日本では、「よく働く」事は、社会的に美徳とされており、クオリティオブライフを損なうほど「働き過ぎる事」が悪いという認識は欠けているようです。

そういった意識が希薄な為、自分が、同僚が、部下が、家族が、非常に危険な状態であったとしても、未然に防ぐアクションに繋がらず、悲しい結果をうむ事になってしまうのではないでしょうか。

過労死の問題は、制度の整備のみならず、人々の「働くこと」に対する意識を変える取り組みを行う事が重要であると思われます。

執筆: Mocosuku編集部

 

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