中国が大量の「米国債」売り…そして加速する世界のドル離れ

 

新興国、資源国の苦境

米国資金をばら撒かれた中国の企業債務残高は、実に18兆ドルという膨大なものであり、そのうちでドル起債の社債もある。米国からの投資を受けるために人民元はドル・リンクしていたが、リンクすると、ドル高になってしまうので人民元も高くなり輸出ができなくなり、リンクを外して人民元を安くする方向である。

インドネシアもドルベースから人民元ベースに変更している。東南アジア諸国は、中国との貿易量が大きく、人民元ベースの方が安定する。このため、ドルから人民元に切り替えている。もちろん、準備預金もドルから人民元に切り替える。

資源国のサウジは、安全保障上からドルリンクを続けているが、米国は石油を自給できるようになり、サウジから買う必要がない。サウジも石油輸出としては中国の方が断然多い。

現時点、米国が中東離れを起し、イランとサウジの中間に位置して中立になることをサウジは恐れているのでまだドルリンクのままであるが、米国が安全保障的にサウジ離れをすると、ドルリンクを解消するはずである。しかし、米国も最新武器のお得意先であるサウジを手放すことはできず、外交的な位置としてはサウジ寄りにして、実行上は中立という際どい外交をしている。

というように、米国が資金を引き上げているので、中国やサウジなど多くの国で、ドルから人民元などに通貨基軸を変更してきているようである。ドルの通貨量が大きく出来たのは、今まではドルが基軸通貨であり、各国が準備預金をして、米国債などのドル資金化していたからである。

ドル基軸通貨制度崩壊と防衛

もし、ドルリンクを外す国が増えると、基軸通貨制度が崩壊するのであるが、各国は米国債を一斉に市場で売ることになり、ドルの長期金利がUPしてしまい、そのことでドル暴落になる。このため、より多くの国がドルリンクを止めることになる。ドル基軸通貨制度の崩壊である。現在、中国が米国債を大量に売り出しているが、まだ中国だけであるので、なんとか対応できるのである。

日銀はマイナス金利にして、金融機関は金利が大きい米国債を買う方向である。米国も日本に要求した可能性もある。

このように心配をする必要に米国はなってきたのである。このため、米国は追い詰められているのだ。ドルという米国の世界支配の道具が機能しなくなる危険がある。

米国としては各国のドルから人民元への準備預金のシフトを止める必要がある。特にこの準備預金を人民元化するのは、東南アジアである。この囲い込みをしないといけない。しかし、米国一国では、貿易量が少なく、中国の貿易量にかなわないので、TPPという仕組みを作り、アジアを米国離れから守りたいということである。

中国対米国の経済戦争が起きているということは、このことを指しているのである。

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