甘利氏の収賄疑惑、なぜか動きの鈍い検察と安倍政権の不適切な関係

 

2月24日の衆院予算委公聴会に公述人として出席した郷原信郎(元検事、弁護士)は、甘利疑惑について次のように検察当局に注文をつけた。

「これは絵に描いたようなあっせん利得だ。検察が捜査を躊躇する理由はない。現職閣僚で有力な与党議員、麻生内閣で行革担当大臣だった甘利氏は、自民党の政権復帰以降、党内でURのことが議論される場合に大きな発言力をもっていたと考えられる。甘利氏も秘書も議員としての影響力の行使が十分にできる立場だった。この問題が大臣辞任だけで何ら真相解明が行われないなら、公明党を中心とする議員立法によってあっせん利得処罰法が制定された意味はなくなってしまいかねない」

高井康行(弁護士)のように「甘利経済財政・再生担当大臣には、国交省所管のURに対しては直接的な影響力はないので、違反は成立しない」と言う専門家もいるが、郷原は「あっせん利得のど真ん中に近い事案だ」と一蹴する。その根拠を、郷原は自身のブログで次のように説明している。

あっせん利得処罰法の対象としているのは、「衆院議員、参院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長」及びその秘書であり、国務大臣は含まれていない。(中略)

 

同法違反は「権限に基づく影響力の行使」を要件としているが、甘利氏や秘書の場合であれば、「衆議院議員としての権限に基づく影響力」が問題になる。国務大臣としての権限や所管は問題にならない。高井弁護士の見解は、法律の条文自体を読み違えている。職務権限との関連が問題となる贈収賄罪と混同しているのではないか。(中略)

 

あっせん利得処罰法は、国会議員の職務権限と直接関係がないために収賄罪の対象とならなかった「政治活動と密接な関係があるあっせん行為(口利き)」による利得の獲得を一定の範囲で処罰の対象にするために制定されたものだ。高井弁護士は、このような法律の制定の趣旨や存在意義を理解しないで発言しているとしか思えない。

簡単に言うなら、あっせん利得処罰法は国会議員や地方議員、もしくは秘書らがその影響力を使って役所に口利きしカネを受け取るケースに適用される。国会議員である甘利やその秘書がURに口利きをする場合、「職務権限ではなく影響力」を使って、URとの補償金交渉を有利に進めることができる。もっと端的に言えば、政権中枢にいる甘利という政治家の名前で相手をビビらせうるということだ。

それゆえにこそ、甘利ほど名のある政治家なら、個人的利害のからむ陳情に悪乗りして、口利き戦利品の分け前をいただこうというような、さもしい考えをいっさい捨てるべきなのだ。甘利にとっては、「はした金」かもしれないが、50万円を2回にわたって受けとったことを本人が認めているのだから、口利きに甘利が関与していなかったという理屈は通らない

やってしまったことは仕方がない。検察が動かなければ、いずれ市民団体が東京地検に告発するだろう。そうなると検察も受理し、捜査に着手せざるを得ない。検察当局が不起訴にしても、市民による検察審査会が2回、「起訴相当」の議決をすれば強制起訴される。

甘利はこそこそ逃げまわるのをやめ、年貢を納める覚悟をすべきであろう。

image by: Wikimedia Commons

 

国家権力&メディア一刀両断』 より一部抜粋

著者/新 恭(あらた きょう)
記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。
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